共同親権「離婚観」と「子ども観」変えられるか? 3識者インタビュー #令和の人権
協議離婚が成立しなかった場合、裁判所を利用することになります。まず当事者同士で合意の形成を図る調停が行われます。家庭裁判所の調査官が中立の立場から子の意向や監護状況を調査し、父母に伝えることで、子のために共同親権の合意が形成される可能性があります。合意が形成されなかった場合は審判に入り、裁判官の職権によって親権について「共同」か「単独」かの判断が下される。虐待やDVの事実が認められた場合には、単独親権にしなければなりません。 共同親権を危惧する人たちから、「家裁の裁判官や調査官に虐待やDVについて調査するスキルがあるのか」という批判があります。職権による調査は現在も行われていますが、今以上の精度が求められると私も思います。研修等による裁判官のスキルアップがちゃんとできるのか。その体制がとれるのか。改正に不安をもっておられる方も多いので、体制の整備はマストです。 法改正に当たっては、衆議院法務委員会で12本、参議員法務委員会で15本の附帯決議が付けられました。附帯決議とは、法律の運用について注文を付けるものです。法的拘束力はありませんが、政府や所管省庁に課題を認識してもらう効果はあります。このうち4本が家裁の人的・物的な体制の整備、職員の増員・専門性の向上(研修)などにかかわるものです。 裁判官は通常3、4年で異動します。しかし家裁は子どもの権利という繊細な事案を扱うのですから、ノウハウのある人が長くとどまれる仕組みにしてほしい。
積み残した課題もあります。 まず面会交流が「誰の権利」であるかがはっきり規定されませんでした。親側の感情、論理で語られがちですが、そもそも面会交流は子どもの権利です。その点が明記されなかったのは問題です。 養育費についても、父母間で合意できなかった場合、法定養育費を適用して当面それを請求できるという構造は導入されました。ですが、多くの国で行われている「立て替え給付」や「行政機関による取り立て代行」という根本的な制度には立ち入らなかった。 もっとも残念だったのは、中間試案ではあった「離婚後養育講座」が削られたことです。これは、こども家庭庁がひとり親家庭支援事業の一環としてやっている離婚前後親支援講座とコンセプトを同じくするもので、民法に盛り込まれれば、離婚を考える全ての親御さんに受講してもらう機会になっただけに、残念です。ちなみに韓国ではすでに導入されていて、受講しなければ協議離婚ができません。 施行まで2年あります。その間に附帯決議の内容がたしかに実現されるか、私たちはさらに見守っていかなければなりません。