9年で668社の神社が減少 危機の「祭り」に女性や地域外の人たちの参加、マッチングサービスも #絶滅危惧文化
現在(2024年11月)までの登録者は284人。創設以来15件の伝統行事の募集案件を掲載し、計39人がお助け隊として各地に派遣された。 福岡県市町村振興局政策支援課地域政策監の宮嵜敬介さんは、1年間の運営でマッチングが成立しやすい活動内容の傾向が見えてきたという。 「神輿を担ぐなど行事の担い手は人が集まりやすいです。一方で、神楽の舞手のように一定期間の練習が必要なものに申し込みをいただくことは難しい傾向があります。登録者の年代は40代、50代で、時間に余裕がある方が多いですね」
お助け隊制度を始めたきっかけは、多くの伝統行事が休止に追い込まれたコロナ禍だという。 「感染状況が落ち着いて、いざ再開しようとしても人が集まらない状況があることが分かりました。このまま伝統行事が途絶えると、地域のコミュニティーがバラバラになるという危機感もあり、福岡県ではこのような事業を始めました」 お助け隊制度のもう一つの狙いは、関係人口の創出と移住・定住の拡大だという。 「私ども政策支援課では、以前から県外の方に向けて福岡県の魅力を発信する『ふくおかファンクラブ』というサイトを運営し、メールやLINEで地域の体験イベントや地元の祭りなど、県内市町村から寄せられた情報を発信しています。現在、『地域伝統行事お助け隊』登録者の大半は県内在住者ですが、今後は県外の人にも参加してもらえればと考えています」 祭りを介して福岡県との接点が増えれば、その中から移住に至るケースが出てくるかもしれないし、さらに地域が活性化するかもしれない。そんな期待を抱いている。 女人禁制の解除や地域外の人々の参加。高齢化や人口減少で地域が弱るなか、多様な価値観を受け入れることで、祭りに新たな活力が生まれている。祭りが維持され、多様な人が関係していけば、地域コミュニティーも維持される可能性がある。祭りの火はまだ燃えている。 緑慎也(みどり・しんや) サイエンスジャーナリスト。1976年、大阪府生まれ。出版社勤務後、月刊誌記者を経てフリーに。科学技術を中心に取材・執筆活動を続けている。著書に『13歳からのサイエンス』『消えた伝説のサル ベンツ』、『認知症の新しい常識』、共著に『太陽系の謎を説く』『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』『ウイルス大感染時代』『超・進化論 生命40億年地球のルールに迫る』など。 「#絶滅危惧文化」はYahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。文化は私たちの生活を潤してくれる存在ですが、ライフスタイルや価値観の変化によって、大幅に規模が縮小したり、消えかかったりしているものがあります。携わる人々が抱える課題や、危機を脱却した事例など、さまざまな切り口で伝え、どのようにしたら残していけるのかを考えます。