発達障害がある2児を育てる、シングルマザーの児童精神科医。精神科のハードルを下げて親の心に寄り添いたい【精神科医さわ】
精神科を受診するハードルを下げたい
――先生は精神科クリニックでの診察にくわえ、さらにYouTubeでの発信もしています。YouTube発信を始めた思いについて教えてください。 さわ 「精神科」って今も偏見が強いと思います。風邪をひいたら小児科に行くのは当たり前でも、精神科は行き慣れないからちょっと不安に感じる人も多いと思うんです。実際に診察をするなかで、生活に困りごとがあっても精神科に行くなんて…という偏見から、受診できずに苦しんでいる人がいると感じていました。 だから診察室で撮影した動画をSNSで発信することで、精神科ってこんなところなんだ、こんな先生がいるんだ、と知ってもらえるのでは、と考えました。そして、こんな人が先生だったら行けるかも、行ってもいいかもしれない、と思ってもらえれば、精神科への偏見やハードルを低めることにつながるのではないか、という思いがありました。 さらに全国的に児童精神科の専門クリニックは数が少なく、なかなか予約が取れない状況があります。私が発信するYouTubeを見て、対処法がわかってもらえるという意義もあるかなと思い、2022年12月から発信を始めました。 ――反響はどうですか? さわ 道を歩いていて「さわ先生だ!」と言われるようなことはまったくないです(笑)。でもコメントで「YouTubeを通して自分が今まで生きづらかった理由がわかって安心しました」とか「生き方を見直していこうと思います」といったコメントをもらえると、よかったなと思います。
子どもが「学校に行きたくない」と言ったら?
――小学校に入って、もし「子どもが学校に行きたくない」と言ったら、親はまずはどんなふうに対応するといいでしょうか。 さわ とてもよく聞かれる質問です。ケースバイケースなので難しいんですが、少なくとも、子どもになにも聞かずに「学校に行きなさい」としかったり、無理矢理連れていったりすることはやめてほしいと思います。子どもが理由を言えるのであれば、聞いてみてその理由を解決するように動いてもいいでしょう。でも、理由がうまく言語化できないことのほうが多いですし、ただ1つの原因だけで行くことができないことは少ないです。 だから、理由がわからないことに対してあまり恐れないでほしいです。「なんでかはわからないけど行きたくないんだよね」「そんなこともあるよね」とまずは子どもの気持ちを受け止めることはすごく大事だと思います。 ――子どもが理由もなく学校に行きたくないというから休ませると、くせになるとか、甘えさせてしまっているのでは、と気になる人もいるようです。 さわ なんとなく学校に行きたくないときに、それが甘えであることももちろんあると思います。だけど、何かに疲れたときに親に甘えたくなって、それで親が甘えさせてくれてよかった、という安心感が得られることは、ときに必要だと思います。少し甘えてみて、心に元気が戻ればまた登校するかもしれません。甘えてみてもどうしても学校に行きたくない状態が続いたら、校門まで一緒につき添ってみるとか、給食だけ食べて帰ってくるとか、その子の過ごしやすさと頑張ることのバランスを探ってみるのもいいかもしれません。