「歴史だけでは食べていけない」――老舗劇団が直面したコロナ危機
活動継続の支援より休業補償を
2020年のステージ市場は595億円で、前年の2058億円から急速にしぼんだ(ぴあ総研の調査による2020年10月時点の試算値)。 緊急事態宣言が出るたびに、劇団や劇場は翻弄される。休業要請に応じても補償はなく、一方で政府は「積極的に公演等を開催」(「ARTS for the future!事業」HPより)するための支援事業を募集する。やめろと言われているのかやれと言われているのかわからないまま、赤字を覚悟して芝居を打ち続けるしかない。もしくは廃業するかだ。 西川さんは公益社団法人日本劇団協議会の会長を務めていて、コロナ禍以来、政府との折衝の場に臨んできた。「活動継続支援よりも休業補償や損失補填を」と繰り返し申し入れたが、聞き入れられなかった。
「第3次補正予算による支援事業の公募が始まるけど、今の制度ではほとんど救われない。非常に煩雑なフォームになっていて、活動の実態に即していない。もちろん不正があってはいけないからきっちりやることも必要だけど、あまりにも細かすぎて交付にたどりつく前にみんなエネルギーを使い果たしてしまう。なぜ(応募フォームが)煩雑になるかというと、日本では文化芸術活動を行う人がちゃんとしたプロのアーティストだと見なされていないから。プロとアマの(行政上の)線引きがはっきりしないんです」 4月30日、経済産業省と文化庁は、緊急事態宣言によって中止・延期になったイベントのキャンセル料支援の拡充を決めた。昨年に比べれば支援のメニューは増えているが、コロナ禍がすぎたあと、演劇の多様性が失われていては支援の意味がない。西川さんは、今の危機を乗り切ったら、演劇人のためのセンター設立に向けて動き出したいと考えている。 ―― 長瀬千雅(ながせ・ちか) 1972年、名古屋市生まれ。編集者、ライター