築100年超の実家をリノベで次世代に残す。耐震化・断熱&減築で古民家でも「冬は床暖房のみ・夏はエアコン稼働1台で快適」 奈良
住み心地は「江戸時代」から「令和」に!
リノベーションによって暮らしはどう変化したのだろう? 「一番違いを感じるのは冬。寒さの感覚は全然違いますね。江戸時代から令和にタイムスリップしたみたいに、住み心地は格段に変わりましたね(笑)。子どものころは雨が降ると濡れながら外廊下を通ってお風呂に入っていたんですよ。ウソみたいでしょう? 和室には仏壇があるので、お坊さんがお経をあげに来るのですが、子どものころはそれが寒かった。今はお坊さんも喜んでくれていると思います(笑)」
奥様の感想は 「冬はエアコンをほとんど使いませんね。リビングには床暖房が3箇所入っているので、それだけでほとんど大丈夫。一番寒い時はファンヒーターを使うくらいです。朝も起きると、じんわり暖かさが残っているのが嬉しいですね。ハウスメーカーさんで建てた離れも断熱はあったはすですが、感覚的には違います」 夏場はどうだろう? 「軒を伸ばしているので、夏場も直射日光はあまり入りません。リビングにはエアコンを2台設置していますが、外気温が30℃を超える今日でも稼働させているのは1台だけ。これで、充分効いていますよね。2台動かすのは真夏のピークの時だけですね」 取材にお伺いしたのは午後1時。陽射しの厳しい夏至前の一日だったが、明るく広々としたリビングでの時間はとても快適なものだった。 この住まいなら娘さんが結婚して新しく家庭を持っても、きっと住み続けることができるだろう。 築100年を超える建物でも、リノベーションし居住性能をアップさせることによって世代を超えて住み継ぐことはできる。ぜひ、参考にしてほしい事例だ。
古民家を生き返らせるためにも断熱性能は重要
前述の矢島氏によると「奈良盆地のこのエリアにも古民家がたくさん残っていますが、間取りや水回りだけでなく、耐震・断熱面での弱点を持つケースも多い。最近は減築やリノベーションで性能アップを行うケースが増えています」とのこと。 また、古民家リノベーションの場合、固定資産税の建物評価額の算出変更や、古い建物の登記抹消など気を付けたい独特のポイントもある。Nさん邸の場合はもともと住居部分の課税が少なかったが、リノベーションによって対象面積が増え、課税額がアップしたようだ。土地の登記も隣家との所有権が飛び地のようになっていた場所があり、それも交換して整理したとのこと。 次世代に住み継いでいくことを考えると、税金や登記面でもクリアにしておくことが正しい選択だとも思う。断熱性能だけでなく、さまざまな気づきをいただけた取材であった。 ●取材協力 Nさん スペースマイン
井村幸治