金星探査機「あかつき」の現状 JAXA会見(全文1)残燃料は4.2年~11.8年分
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8日、記者会見を行い、金星周回軌道に投入してから3年を迎える金星探査機「あかつき」の観測成果について発表した。 【動画】金星探査機「あかつき」軌道投入から3年 JAXAが会見(2018年12月7日) ※【**** 00:35:30】などと記した部分は、判別できなかった箇所ですので、ご了承ください。タイムレコードはYouTubeのTHE PAGEチャンネル上の「金星探査機「あかつき」軌道投入から3年 JAXAが会見(2018年12月7日)」に対応しております。 ◇ ◇
中村氏による「あかつき」の現状説明
司会:本日は説明会にお集まりいただきありがとうございます。定刻になりましたので、金星探査機「あかつき」観測成果に関する記者説明会を開始いたします。それではまず初めに登壇者の紹介をいたします。皆さまより向かって右手から、JAXA宇宙科学研究所太陽系科学研究系教授、中村正人。同じく太陽系科学研究系教授、佐藤毅彦。もう1名、国際トップヤングフェローのJavier Peraltaがおりますが、遅れてまいりますので後ほどあらためてご紹介いたします。 それでは金星探査機「あかつき」の概要について、中村よりご説明申し上げます。 中村:プロジェクトマネージャをやっておりました中村でございます。金星探査機は3年前の2015年の12月7日、今日に金星にたどり着いて観測を始めたわけでございますが、その後の状況について簡単に、5分ほどでご説明をしたいと思います。 まずここに履歴が示されております。2010年の5月に地球を出発しまして、10年の12月7日には金星に到着いたしましたが、皆さまよくご存じのとおり、金星周回軌道に投入をしようとして失敗をしております。このあと5年間、放浪の旅を続けまして、太陽の周りを回りまして、また同じ日の2015年12月7日、この日に金星周回軌道に投入、再挑戦をいたしまして、このときに成功いたしております。遠近点は約38万キロ、軌道周期は10.5日ということで、当初の予定の遠近点が8万キロ、軌道周期30時間というものからかなり大きな変更がありましたけれども、このあと、遠い遠近点であっても十分な観測を行うことができたというふうに考えております。 2016年4月1日から定常観測運用を開始いたしまして、2016年の12月からはIR1とIR2が機能を停止しているという状況でございますが、それについては後ほど佐藤のほうから簡単にご説明をいたします。2018年度から、今年度からは延長運用という形で、プロジェクトとしてはJAXAのプロジェクトではなくて、宇宙科学研究所の所内チームという形で運用をしておりますが、やっていることは実際変わらないということでございます。 ここにありますように、2018年11月27日6時20分、日本時間ですけれども、金星軌道投入から100周をしているということで、軌道周回数は12月7日の金星投入時の近金点通過時に1から数え始めて、100回というふうにカウントしております。この図は金星を中心にした座標系にプロットしたものでございますけれども、このようにじわじわと方向を変えておりますが、100回ほど周回をしているということでございます。 探査機の寿命が皆さまの一番の関心ではないかと思うんですけれども、大きな不具合がなければ残っている燃料で寿命が制約されるということがございます。2018年12月7日、今日の時点で1.41キログラム、プラス2.45かマイナス0、これ、悪めに必ず見積もりますので、1.41は残っていると。もしかすると、うまくすると2.45が余計に残っているかもしれませんということです。 経験上、1日平均0.9グラムの燃料を姿勢制御に使用しておりますので、残燃料が1.41キログラムの場合には4.2年の寿命。つまり2023年の初頭までということになります。もっと多く、2.45キロ余計にありますと、11.75年の寿命、2030年ごろまで寿命が延びるということになります。もちろんこれは大きな軌道変更がないということを仮定しておりまして、もし今後の計算で大きな日陰、長い日陰が出るというようなことで致命的なことが起きるというふうに予想されますと軌道を変えなければいけないので、そのときにはかなり大きな変更が必要かもしれません。 最後のスライドですが、これは現在の運用であります。実は今「はやぶさ2」が飛んでおりまして、リュウグウのすぐそばにいるんですけれども、地球から見ますとリュウグウとそれから金星というのはだいたい同じ方向に見えるんですね。なので、1つの深宇宙局では両者をカバーできないということでありますけれども、「はやぶさ2」はリュウグウが必ず地球から太陽の反対側にいるので、臼田64メートルが必要であります。それに対して「あかつき」は金星が地球に近いときは、内之浦34メーターアンテナを使用可能でございますので、2018年度はこの内之浦のアンテナを使います。しかしながら来年は、金星がずっと太陽の反対側を回っていきますので、このときにはやはり大きなアンテナが必要ということで、NASAの協力を得てデータの受信を行うということにしております。 電波科学のための電波受信にはインドのISRO、これは実際にやってみて実績があります。それから欧州のDLRの、これは試験受信をしておりますけれども、この深宇宙局の協力を得つつあるという状況でございます。これが「あかつき」の現状であります。以上です。 司会:続きまして佐藤のほうから概要をお願いいたします。