非情な”戦力外通告”…異色のロングスロー”使い手”原山海里がトライアウトに挑戦する理由とは?
「今後はどうするんだ」 「僕はまだサッカーを頑張りたいと思っています」 「そうか。やれるところまでやり切ってこい。頑張れ」 当時の会話を再現するとこうなる。いわゆる戦力外を、2年続けて通告されたショックは小さくない。東京学芸大で中高の保健体育の教員免許を取得している原山は、しかし、大好きなサッカーをやめる自分をいまは想像できないと打ち明ける。 「大学を卒業してまだ2年目ですし、若いうちはどんどん挑戦しようと自分のなかで決めているので、Jリーグの舞台でまた戦えるようにはい上がっていきたい」 身長174cm体重68kgの右サイドバックを一躍全国へ知らしめたのが、青森山田高が3位に入った2015年度の第94回全国高校サッカー選手権だった。 準決勝までに青森山田高があげた12ゴールのうち実に5つが、原山のロングスローから演出された。しかも、山なりの軌道ではなく、低空の高速クロスのようなそれを描く。手を使うがゆえにコントロールもつき、それでいてオフサイドはない。最長不倒距離は約40m。究極の飛び道具はテレビ中継を通じて、日本サッカー界に衝撃を与えた。 指導する黒田監督も対戦相手の脅威であり続けた、原山のロングスローの価値を認めた。それでも高校サッカーの次のステージをにらめば、一芸に秀でているだけでは通用しないと、あえて心を鬼にしてプロからのオファーが届かなかった原山に言及した。 「あれ(ロングスロー)だけでは(プロには)行けない。真面目に一生懸命やり続ける子だけれども、サッカー自体のスキルももっと上げていかないと。その点をしっかりと大学の4年間で磨いてくれれば、可能性がないわけではないと思っています」 恩師の檄をしっかりと受け止めた原山は、念願のオファーを岩手から手繰り寄せる存在になった、東京学芸大蹴球部での4年間をこう振り返っている。 「自分がボールを持っていないときのポジショニングなど、オフ・ザ・ボールのときにどのようにして攻撃に参加していくのかを意識したし、一人で相手からボールを奪うような選手ではないと考えたときに、周りの味方と上手く連携しながら奪う方法も意識した。目立つ選手ではないけど、それでも裏方で頑張ることを常に考えていた」 試合に絡み始めた八戸では、将来につながる新境地も開拓した。 「サイドバックに加えて今シーズンは中盤、ボランチのポジションでもプレーした。ユーティリティーという部分も生かしながら、自分を売り込んでいきたい」