スペイン紙も怪我から復帰した久保建英の移籍後初ゴールを絶賛「日本の魔法使い」「スーパースターを演じる」
王者アトレチコ・マドリードを撃破したMF久保建英(20・マジョルカ)のスーパーゴールへ、現地スペインメディアから称賛の声が鳴り止まない。 日本時間5日未明に行われたラ・リーガ1部第16節で、敵地ワンダ・メトロポリターノに乗り込んだマジョルカが、ホームで無敗を続けていた昨シーズンの覇者から8試合ぶりとなる白星をもぎ取った。1-1で迎えた後半アディショナルタイムに、途中出場していた久保が移籍後初ゴールを決めて痛快無比のヒーローになった。 右ひざの故障から復帰して2戦目の久保は、自らが起点になったロングカウンターから敵陣へ迫り、最後はスロベニア代表GKヤン・オブラクとの1対1を制した。世界的な名手の股間を狙って打ち抜いた一撃に、全国紙『アス』が「タケ・クボがスーパーヒーローを演じた」と大見出しを打つなど、スペイン全土へ衝撃が伝えられた。 相手はラ・リーガ連覇を狙うアトレチコ・マドリード。舞台は4勝3分けと無敗を継続していた王者のホーム。しかも、後半23分に先制点を許してしまう。 リーグ戦で7試合続けて白星から遠ざかっていた昇格組のマジョルカへ、不利な条件がいくつも重なった。だからこそ、久保が決めたゴールの価値が高まってくる。 例えばラ・リーガの公式ツイッター(@LaLiga)は、決勝ゴールを決めた直後の興奮極まる久保の写真にこんな英字を、左右に星マークを添えた形で投稿している。 『TAKE SUPER STAR』 無意識のうちに「スーパー」という言葉で形容してしまうゴールは、久保自身が起点になった。勝ち越しゴールを狙ったアトレチコのセットプレーを、マジョルカの守備陣が立て続けにはね返す。そのこぼれ球が目の前に落ちてきた瞬間だった。
ピッチに弾む前に自らの頭で、前方にいたFWアンヘル・ロドリゲスへはたいた久保が間髪入れずに右斜め前方へスプリントしていく。その刹那に左手で縦パスを要求して、意図的に緩やかな弧を描きながらグングンと加速していった。 久保の視界にとらえられていたのは敵陣に広がるスペースと、オフサイドを誘おうとして前へ出たものの、久保のコース取りに逆を突かれたスペイン代表MFコケの姿。試合後の記者会見に臨んだ久保は、コケとの駆け引きに続くシーンをこう振り返った。 「そのために僕は一人で抜け出せて、ゴール前のオブラクに目を向けることができた。オブラクはまるで巨人のようでちょっとナーバスになったけど、横にシュートを打ったらカットされると思い、股抜きに賭けたのが上手くいった」 緩やかな弧を描きながら走ったのは、オフサイドにならないように、ハーフウェイラインを超える手前でロドリゲスの縦パスを呼び込むためだった。果たして、追走してきたコケは天を仰ぎ、股間を狙われたオブラクはピッチを何度も叩いて悔しがった。 ゴールが決まった瞬間、時計の針は90分を数秒回っていた。さまざまなプレッシャーがかかってくるシチュエーションにもかかわらず、20歳の日本人が立て続けに、なおかつ冷静沈着に駆け引きを制した。全国紙『アス』は「タケ・クボがスーパーヒーローを演じた」との大見出しを介して、ゴールに至るまでの過程を称賛した。 「マジョルカにとって歴史的な午後になった。ワンダ・メトロポリターノを沈黙させて、約2ヵ月間にわたって白星を手にできなかった負の連鎖を断ち切った。冷徹なスーパーヒーローに扮したタケ・クボが、マジョルカ復帰後の初ゴールを決めて千両役者ぶりを証明した。根性と真剣さ、そして信念があればすべてが可能だと彼らは示した」 さらに『アス』は別の記者が、タイトルに「タケ・クボがアトレチコへ冷や水を浴びせた」と銘打ったコラムも掲載している。冷や水とはいったい何を意味しているのか。答えはキックオフ前におけるラ・リーガ1部の順位表にあった。