〈目撃〉タコがいろんな種類の魚たちを率いて狩り、タコパンチで「喝」も、驚きの研究結果
協力しているならタコはエネルギーを節約できている
サンパイオ氏の仮説が正しければ、タコは魚と協力することでエネルギーを節約できる。単独で行動するよりも広い範囲を短時間で探せるためだ。その結果、繁殖、社会交流、遊び、巣作りやその維持といったほかの活動により多くの時間を割けるようになる。 ほかにも、協力が必要な場面で仲間に行動を強いる生きものは存在すると、シュネル氏は言う。 「ホンソメワケベラなど、掃除魚と呼ばれる種の場合、掃除をする相手の魚をかじってしまったメスをオスが罰することがあります。彼らの役割は、顧客を食べることではなく、きれいにしてやることですから」 今回の論文に関しては、タコが「複雑な社会的交流を行い、群れのなかでの役割分担を理解していることを示しています」と話す。
いずれにしても疑問は残る
しかし、疑問も多く残されている。魚たちは本当に協力しているのか、それともマザー氏が言うように、「単に同じときに同じ場所に居合わせただけ」なのだろうか。 サンパイオ氏は、タコの黒と白の体色が魚に対する警告になっているのかどうか興味があると話す。「イライラさせるなよ!」とでも言っているかのように。また、魚がこれを理解して行動を変えているのかも知りたいという。 もう一つの疑問は、数十年生きる個々の魚をタコが見分けているのかだ。「『あれがスティーブで、こっちがマーサだ』とわかっているのでしょうか。そして、スティーブとマーサと一緒に狩りをしたいと思っているのでしょうか」
文=Melissa Hobson/訳=荒井ハンナ