ブルータスのカエサル暗殺を記録した古代の金貨がオークションに。予想落札価格は1億7000万円以上
紀元前44年、共和制ローマの独裁官ガイウス・ユリウス・カエサルを腹心の1人であった元老院議員マルクス・ユニウス・ブルータスが暗殺した。「ブルータス、お前もか」という台詞と共に今なお語り継がれるこの事件は当時の人々にとっても衝撃的なもので、ローマの有力者層が個人的に所有するためにブルータスの肖像が刻まれた金貨を少数鋳造した。現在世界に17枚が確認されているうちの1枚が、オークションに出品されている。アートネットが伝えた。 【写真】ブルータスの金貨 金貨は、表に葉の縁取りとにブルータスの横顔が描かれ、裏には円形の縁取りの中に槍、胸当て、兜、盾といった軍用装備品が描かれている。これは、ブルータスの成功が軍事と密接に関わっていることが表現されている。彼は他の指導者に比べて兵士たちを大事にしており、彼らに支払った報酬は莫大だった。ブルータスは、金貨が鋳造された後の紀元前42年にカエサルの腹心だったローマの執政官マルクス・アントニウスとカエサルの後継者でローマ帝国創始者のオクタヴィアヌスとの戦いに敗れ、自殺している。 金貨が出品されるのは、スイス・ジュネーブを拠点にするコイン専門のオークション会社Numismatica Genevensis SA。12月9日と10日の2日間に渡ってスイスの首都ベルンにあるボー・リヴァージュ・ホテルで開催されているコインオークション3部作の目玉となっており、開始価格は85万ドル(約1億2800万円)、落札価格は110万ドル(約1億7000万円)以上と予想されている。 コインのジャンルの熱心なコレクターは世界各地におり、このような価格は珍しくない。ちなみにコインがオークションで記録した最高額は、2021年6月9日にニューヨークのサザビーズで出品された、1933年製造のダブルイーグルコインで1887万2250ドル(約28億円)だ。古代コインの記録は、ロシアのエルミタージュ美術館が所蔵していた2000年前のギリシャの金貨で、2023年に600万ドル(約9億円)で落札されている。 Numismatica Genevensis SAの創設者であるアラン・バロン博士は、アートネットの取材に対し、「このブルータスの金貨は、古代のコインの中でも、ローマ帝国の歴史を形作った瞬間を記念した最も希少で重要なものです。世界中の貨幣史上の傑作を集めた今回のオークションのハイライトとなるでしょう」と語った。