「他人を信じすぎて損ばかりする人」が、相手との距離感を掴むコツ
人との適切な距離感がよくわからずに失敗してしまいがち...という人は発達特性によるものかもしれません。そんな発達特性を持ちつつナレーター、声優として活躍する中村郁さんは、適切な距離感で人と付き合うためのさまざまな工夫をしてきたといいます。その経験の中から得た、人と付き合ううえで大切な考え方を書籍『発達障害・グレーゾーンかもしれない人の仕事術』より紹介します。 人間関係が良くなる8か条 ※本稿は、中村郁著『発達障害・グレーゾーンかもしれない人の仕事術』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
人を「信用」するか「信頼」するか
発達障害を持つ人は、人の言葉をそのまま素直に信じる傾向が強いと言われています。人との距離感も間違えやすいため、一気に距離を縮め、まだあまり知らない相手に心を全開にしてしまって、利用され、後悔するなんてことも。 信じたのに裏切られた。よくある話ですが、私は裏切った相手よりも、相手の表面だけを見て、信じた自分のほうが無責任なのでは、と考えるようにしています。 人はいろいろな顔を持っています。時と場合によって、また時間の経過によって、変化します。私自身だって同じです。それなのに、相手の一部分だけを見て、「信じる」と勝手に決める。それでいて、自分の思っていたのと違う部分を見たときに裏切られたと感じるのは、ものすごく自分勝手なことだと気づいたのです。 「信用」と「信頼」。似ている言葉ですが、少し違います。 「信用」とは、これまでの実績や成果に対して、客観的な判断基準で評価した条件付きのものです。「信頼」とは、「信じて頼る」と書くように、自分の感情や主観が含まれ、その人の人柄や言動を見て決める無条件のものです。 これまで私が、「信じる」という言葉を使ってきたのは、「信頼」の意味のほうでした。プライベートでは、大切な人を信頼していきたい。一度「信頼」すると決めたなら、どこまでもそれを突き通す人間でいたいと思います。 でも仕事のときは、よほど付き合いのある方を除き、「信用」を選ぶことを心がけています。そして、その人に信用できる実績や成果があるのかを客観的に見極めます。 そして、相手を信用すると決めたら、自分が「トカゲ」になったと想像してください。信用は、トカゲのしっぽの部分に任せるのです。 体全体で信用してしまうと、もし相手の行為が信用に足るものでなかった場合、大きなダメージを受けてしまいます。しっぽに任せていたなら、相手が信用を失う行為をした場合、ちょんとしっぽだけを痛み少なく切り離し、あなたの心を守ることができます。 これは決して、いい加減に相手を信用しようということではありません。何かあったときに、ダメージを最小限に防ぐための処世術です。