「私は変われた」休養から5年、消えた元賞金女王・森田理香子が明かす今の心境 #今つらいあなたへ
「引退」とは言わなかった理由
これだけつらい経験をしていれば、今後一切、試合に出ない選択肢もあったはずだ。“事実上の引退”とも報じられたが「何度も言いますが、引退ではないんです(笑)」と話す。 「休みがほしかっただけ。引退って言うと、もう試合に戻れないじゃないですか。人間やし、気が変わるかもしれない。別にゴルフがめっちゃ嫌いになったわけじゃなくて、頭がいっぱいいっぱいで考えられへんことってあるじゃないですか。ゴルフに限らず、人間関係もそうやし。みんなつらいことってあるから、ちょっと休んで、いろいろなことを考えようと思いました」 高校卒業後にプロとなり、10年間はゴルフ漬けの人生だったからこそ、一度は離れてみるのもいいと思ったという。 「ゴルフはしたくなかったから、本当のプー太郎をしていました。Netflixをずっと見ていて、もう全部見たから飽きたなってくらいに(笑)」 しかし、そんな生活も長くは続かず、“緑色”が恋しくなった。 「ふとゴルフ場の緑を見ることがなくなったって思ったんです。町中に緑はあるけれど、家にずっといると余計に気を病むというか……。もう十分に休んだから、仕事を頑張ろうと思ったときに解説の仕事をいただいたんです」
「人間不信になった時期もありました」
2019年5月、国内女子ゴルフツアーの下部「ステップ・アップ・ツアー」で解説の仕事を初めて引き受けた。 「久しぶりに人と会ったり、コースチェックしたりして、ゴルフってすごくいいなって思い出してきたんです。私がプロになりたてのときにレギュラーツアーに出ていた先輩プロも多くいて、とにかく懐かしかった」 この仕事が大きな転機になった。 「今の選手たちのプレーが見られて、すごく若々しいし勢いもある。でも、『私もまだいけるやん』って思っちゃったり。もともと、私は飛距離を売りにしていたから、今も『飛ぶだけじゃん』って言われるんです。でも『それでもいいやん。あなたは飛ばすことできひんの?』みたいに心の中で思ってます。当時はこんなこと言われへんかったけれど(笑)」 森田のスイングフォームの虜になったアマチュアゴルファーは多い。今も熱烈なファンがいるのは、それだけ女子ゴルフ界に残したインパクトが強かったからでもある。 「企業のプロアマに行ったら、『もったいない。試合に出てほしい』って言ってくれる人が多くてビックリします。勝つ、勝たへんじゃなくて、ただ試合に出ている姿を見たいっていう人もいる。最近は、成績が悪くなったときにいてくれはる人がほんまもんやなって思うんです。いいときは誰でも寄ってくるし、悪くなったら離れていく。若いときにそれを経験して人間不信になった時期もありました。スポーツ選手って、光を浴びている時間が短いし、忘れられる存在だと思っているんです。でも、私を応援してくれる人がまだいるってことは幸せだと改めて感じています」 ゴルフ場の緑が懐かしく思えると、ファンの支えと声が耳に届き、胸に響いた。自分の居場所がどこなのかを長い歳月をかけ、また見つけることができた。 「ゴルフは好き。というか、私にはそれしかないと分かったんです」