「AQUOS R9 pro」と「らくらくスマートフォン」 真逆の新機種から見える、日本メーカーの“生き残り戦略”
シャープとFCNTが、相次いで秋冬商戦向けの新たなスマートフォンを発表した。シャープは定番ともいえるミッドレンジのAQUOS senseシリーズにデザインを刷新し、ディスプレイなどにも磨きをかけた「AQUOS sense9」を追加。さらに、サプライズとして、今まで以上にカメラ特化を推し進め、1型超のイメージセンサーに加えて1/1.56型の望遠カメラまで搭載する「AQUOS R9 pro」も披露した。 【画像】FCNTの新生らくらくスマートフォン これに対し、FCNTは約3年ぶりとなるらくらくスマートフォンシリーズの最新モデルとなる「らくらくスマートフォン F-53E」を発表。型番からも分かるように、同モデルはドコモ向けの最新モデルとして投入される。FCNTもサプライズを用意しており、初となるワイモバイル向けの「らくらくスマートフォン a」も合わせて発表。さらに、オープンマーケット向けの「らくらくスマートフォン Lite」まで導入し、これまでドコモに限定されていたらくらくスマートフォンを一気に広げていく。 ハイエンドモデルでカメラ性能を突き詰めたAQUOS R9 proと、シニア世代でも簡単に使えるらくらくスマートフォンは、ターゲット層が真逆のようにも思える。一方で、特定の機能や市場にきちんと照準を合わせ、パーツレベルからスクラッチで作り込むモノ作りの姿勢は両社の共通項。こうしたモデルは販売量が少なくなりがちだが、新たな販路を開拓し、市場を広げようとしている点でも一致している。2社の新製品からは、生き残りをかけた日本メーカーの戦略が見えてくる。
シャープが持つ全ての技術を注ぎ込んだAQUOS R9 pro、カメラも大幅に進化
「今、シャープが持っている全てをつぎ込んで作った、世界最高レベルであろうといえるスマートフォン」――新たに登場するAQUOS R9 proをこのように評したのは、シャープのユニバーサルネットワークビジネスグループ長 兼 通信事業本部 本部長の小林繁氏だ。そのコメント通り、AQUOS R9 proは、これまでのフラグシップモデル以上にカメラ特化を推し進めている。 画質チューニングやレンズ選定などにおけるライカとの協業は継続しつつ、本体のデザインを刷新。背面のカメラユニットをリングで囲い、“デジタルカメラらしさ”を全面に打ち出した。単に見た目がデジタルカメラのように見えるだけでなく、側面に本物のデジタルカメラと同じパーツを用いたシャッターボタンを搭載しており、横位置での撮影時に自然とシャッターを切れる操作性も再現した。半押しでのフォーカスロックにも対応する。 機能面では、メインカメラに1/0.98型という1型をわずかに超えたセンサーを採用している。これまでのAQUOS R(pro)シリーズは、画素数の大きな1型センサーと一般的なスマホカメラより画角の広いレンズを組み合わせており、標準の画角で撮影した際には中央部を切り抜いて使っていた。センサー1つで超広角と標準的な広角を両立させるためだ。 これに対し、AQUOS R9 proでは1/0.98型のセンサーの全域を利用し、広角撮影を行う。クロップをしない代わりに、別途、5030万画素でマクロ撮影にも対応した超広角カメラも搭載した。これによって、「標準域で撮ったときの画質が大きく変わる」(同)。 広角カメラの精細感が上がり、より細かな描写を行えるようになった。性能の高い広角カメラの実力をさらに引き出すため、複数カメラを搭載する一般的なスマホに近い仕様に変更したというわけだ。 また、今までのAQUOS R(pro)には、望遠カメラが搭載されておらず、遠距離の被写体撮影を苦手としていた。広角カメラのピクセルビニングを解除し、クロップすることでズームはできたが、やはりそれには限界もある。そこで、AQUOS R9 proにはペリスコープ(潜望鏡)型の望遠レンズを搭載。センサーサイズも1/1.56型と、ミッドレンジモデルのメインカメラ並みに大型化している。焦点距離は35mm判換算で65mmとなり、2.8倍までのズームを行える。 プロセッサには、Qualcommの「Snapdragon 8s Gen 3」を採用。ベイパーチャンバーを搭載するなど、放熱対策にもこだわった。どちらかといえば、カメラ機能は他社に出遅れていたシャープだったが、AQUOS R6でライカとの協業を開始したのを機に、画質を大きく改善。1型センサーを他社に先駆けて採用してきた。こうした取り組みが奏功し、「ここ数年はライカとのコラボで評判も上がってきている」(小林氏)。AQUOS R9 proでは、さらにそのカメラを一段引き上げることで、フラグシップモデル好きのニーズに応えることを目指す。