<セルビア戦>香川真司 意味のあるアウェイ戦
昨年10月以来、1年ぶりとなるザックジャパンの欧州遠征が始まった。2試合組まれている親善試合の初戦となるセルビア戦は10月11日(金)、セルビア第2の都市ノヴィサドで行われる。 首都ベオグラードから北に約75キロ、人口約30万人。市内にはドナウ川が流れ、街なかの建物には古い趣と、戦争によって破壊された後に修理された新しい匂いが入り交じり、落ち着いた中にも活気が漂っている。 通貨はディナール。ユーロに慣れすぎた身には、水や軽食、バスの切符を買うだけでもアウェイ感に包まれる。
狙いはアウェイの弱さの克服
ザッケローニ監督が欧州でも馴染みのない国での2試合を組んだ狙いは何か。それは、アウェイでの弱さを完全克服したいという点にある。 W杯アジア予選を危なげない戦績で乗り切った日本だが、冷静に目を凝らせば、ホームでは図抜けた強さを発揮していたものの、アウェイでは格下のヨルダンや北朝鮮に負けた。 予選レースで常に首位を走っていたためにかき消されていた感のあるアウェイでの脆弱さ。それが現実問題として浮き彫りになったのが6月のコンフェデレーションズ杯だった。“真っ向からぶつかることで課題を見つけようとした”とは言いようで、日本は弱点を糊塗する術を持ち合わせていないことを露呈した。守備の崩壊はその象徴だった。 このままでは来年の本大会で上位に進出する夢を描くことすらはばかれる。そういった流れで組まれたのが、今回の東欧2連戦なのだ。
香川「どこまで僕たちのサッカーをして勝てるか」
ザッケローニ監督の希望通り、セルビア、ベラルーシでの完全アウェイの戦いが実現。そしておそらく、選手の中で今回のアウェイ2連戦を最も歓迎しているのが香川真司である。 2試合のテーマを尋ねられた香川は、「アウェイでどこまで僕たちのサッカーをして勝てるかということです」ときっぱり言った。口調には何か自信めいた響きすら備わっていた。 欧州遠征での香川といえば1年前の10月12日、フランスのサンドニで行われたフランスとの親善試合が浮かぶ。ボールポゼッションもチャンスメークもほとんどできぬまま、試合終了の笛を聞くことになろうかと思われた後半43分、日本にゴールをもたらしたのが、背番号10だった。 フランスの左CKのクリアをマイボールに収めた日本は、一気呵成のカウンター攻撃を仕掛け、長友佑都のクロスから香川が右足でシュートした。「さすがはマンチェスター・Uの香川」。誰もにそう思わせる千金ゴールだった。