<セルビア戦>香川真司 意味のあるアウェイ戦
マンチェスター・Uでは出場機会減
今季はマンチャスター・Uに移籍して2シーズン目を迎えているが、モイーズ新監督体制の下、出場機会を大幅に失っている。開幕以来約2カ月がたったというのに出場したのはわずか3試合。移籍ウインドウがクローズする直前にアルマン・フェライニが加入したかと思えば、今度は18歳のアドナン・ヤヌザイが台頭してきた。 状況は確かに悪い。けれども、ここまでくれば、今何をすべきかを一番分かっているのは香川自身だろう。 「試合には出られていないが、それでもやることは変わらない。ポジション争いが激しくなるのもそれは当たり前のこと。僕は監督の下でアピールするだけです」 10年W杯南アフリカ大会では、若手の帯同メンバーとして日陰の立場で1カ月間の合宿をこなし、非公開練習では代表メンバー以上のパフォーマンスを見せ続けたという伝説がある。監督の判断一つでW杯メンバー登録変更ができるという状態が代表勢に緊張感を与えたというのは誰もが認めている逸話であり、そのときの悔しい思いが移籍先のドルトムントでの活躍につながった。
ザッケローニ「心配していない」
11年アジア杯では準決勝の韓国戦で足を骨折したが、ケガが癒えた後はドルトムントで最高のシーズンを過ごしている。香川の「自分は何も心配していない」という言葉には、現状打破へのきっかけは常に目の前にあるのだという強い自負が隠れている。 香川と吉田について聞かれたザッケローニ監督もこう語っている。 「2人はこのチームのメンバーとして、ずっと名を連ねてきている。所属クラブで出場機会に恵まれていないことは彼らにとっては当然良いことではないと思う。けれども彼らは実力を備えている2選手。心配はしていない」
プレミアでプレーする選手とマッチアップ
セルビア戦で香川に注目したい理由はもう一つある。セルビアのDFラインにはプレミアリーグの強豪クラブでプレーする選手がそろっているからだ。 マッチアップが濃厚な右サイドバックには、チェルシーのイバノビッチ。左サイドバックにはマンチェスター・シティーのコラロフ。プレミアリーグのライバルチームの主力DFを粉砕したとなれば、モイーズ監督へのアピールにもなるに違いない。少なくともメディアは後押しできる。 香川自身、「セルビアのDFラインには特に良い選手がそろっているので、攻撃陣にとってはやりがいがある。そういう相手にゴールを奪えるようにチャレンジしたい。常に得点を狙っているし、その中でも良い内容のサッカーをして勝ちきれるようにしたい」と話している。
香川は必ず這い上がってくる
アウェイでの強さというテーマに関しても、香川は強い意志を示した。 「フランスに勝ったことはアウェイでの弱さを克服したわけではなく、内容はともなっていなかった。今回は結果もそうだが、中身をともなって勝ちきりたい。アウェイでもしっかり自分たちのサッカーをできるように頑張る」 香川は必ず這い上がってくる。 「代表で弾みをつけてチームに帰れればいいと思う」というのは彼がいつも口にしている言葉。タイミング良く組まれた東欧2連戦を苦境を打破するきっかけとするという意思が、日に日に高まっているのが伝わってくる。 (文責・矢内由美子/スポーツライター)