「毎日食べても飽きない!」中華料理愛好家・酒徒さんが語る、家庭の新しい中華料理
“味付け”は徹底的に削ぎ落とす
小竹:酒徒さんは、ただ食べ歩きをするだけではなく、そこから再現してレシピに落とすところまでされていますが、もともと料理は好きだったのですか? 酒徒:大学生の頃は目玉焼きくらいしか作っていなかった気がします。食べるのは大好きでしたが、母が厨房を握っている家庭だったので、20代は100%インプットでした。日本にいるときも、中国にいるときも、基本全て外食で、全てインプットという感じでした。 小竹:そうなのですね。 酒徒:ただ、30代になって中国生活も3~4年目になり、結婚して広州に住み始めた後は近くの市場に買い物に行くようになりました。生きた鳥とかが売っていて、みんなは買って帰って家で捌くのかと思ったら、ちょっとやってみたくなってきて。それで捌き方を本で調べたというのが最初のきっかけですね。 小竹:駐在のときなのですね。 酒徒:そうです。駐在のときが中華料理を作ろうとした最初で、ただその頃はまだ自分にとって料理は趣味の世界で、週末にそういう奇抜なことをやってみようみたいな、いわゆる“男の料理”ってやつでしたね。 小竹:“週末の男の料理”では、どういったものを作っていたのですか? 酒徒:麻辣な火鍋を1から作ってみるとか、丸鶏をそのまま茹でて、広東の宴会料理に欠かせない白切鶏という料理を作ってみるとか、2~3時間かけて広東のスープを作るとか、日常ではない料理ですね。 小竹:うんうん。 酒徒:それが日常の家事としての料理に落とし込まれていったのは、上海に移って子どもが生まれたときです。僕も妻もローカル中華が大好きで、食べ歩きが大好きだったのですが、さすがに0歳の子どもを抱えてそういう生活を維持するのは難しくなって。中国にいるのに中華料理を食べに行けない、それなら作るしかないという感じでした。 小竹:そういうきっかけだったのですね。 酒徒:それで、僕のような素人でも再現できそうなものは何かと考えて、なるべくシンプルなもの、手数が少ないもの、日常の中でも作っていけるものというところからレパートリーを増やしていきました。 小竹:最初はどういったものを作ったのですか? 酒徒:本の表紙にもなっている「中華茶碗蒸し」です。溶き卵に下味をつけたひき肉を入れて蒸すだけだし、すが入ってもどうでもいいという、日本の典雅な感じの茶碗蒸しとはまるで違うものなのですが、これなら僕もできるかもというところで試しました。