「毎日食べても飽きない!」中華料理愛好家・酒徒さんが語る、家庭の新しい中華料理
食べて調べて書くことで記憶が定着する
小竹:酒徒さんにとって「作る」と「食べる」は、どういった意味を持っていますか? 酒徒:生活であり、趣味であり、家族や友人とのコミュニケーションツールでもあり、精神安定剤でもある。だから、ほとんど人生の全てですね。作ることも食べることも、ないことは考えられないです。 小竹:最初は食べることが優先で、作ることも好きになって、もう今は胃袋が足りないのでは? 酒徒:本当にそう思います。牛みたいに胃袋が4つあったらって(笑)。あと、人生の時間が短すぎるとも感じます。それこそ中国を食べ歩くのに、自分が食欲を持ったまま旅ができるのはあと何年だろうと考えたりもします。
小竹:noteやSNSでは食以外の情報も発信されていますが、自分で調べることも好きなのですか? 酒徒:食べておいしいで終わりたくなくて、なぜそういう料理があるのか、どう作っているのかということにすごく興味があります。歴史が好きな人間なので、調べたり書き残したりということが性格に合っていたとも思います。実際にやり始めると、食べて調べて書くことで記憶も定着するし、書いたときにおいしさをもう1回思い出すこともできる。 小竹:なるほど。 酒徒:調べて書いてのサイクルで、1回の料理を何回も味わえる。下手したら何年後かにもう1回味わえるみたいなこともあるので、どんどんはまり込んでいってしまった感じです。途中からそれに作るも加わって四重層で楽しんでいます。 小竹:今後やってみたいことはありますか? 酒徒:夢物語的ではありますが、ここ数年はいろいろな発信がずっと続いてきて、中国に行けていないし住めていないという状態なので、また久々に本場の料理をインプットする機会を中長期的に持ちたいです。 小竹:中長期ですか? 酒徒:ただ夢だけを言えば、何ヶ月かどこかの農村に籠って、そこの厨房を見ていたい。そして、その料理をいただきたい。そういうことを中国の各地域でやれたら、それは楽しいだろうなと思います。 小竹:数ヶ月お休みになったら、中国のどこに行きますか? 酒徒:難しいですね。僕は南方の少数民族の食文化がすごく好きなので、貴州省や雲南省の山奥に行って、まだ見たこともない調味料や食材に出会ってみたいです。 小竹:その辺りにはどういった文化があるのですか? 酒徒:貴州省はもともと山がちでそんなに豊かなところではなく、食材の幅に制限がありました。限られた食材を長く持たせなくてはいけないため、発酵文化が優れた民族で、そこに唐辛子の辛みが加わり、発酵の旨味と辛みが融合した、日本ではなかなか食べられない未知の味わいがあります。 小竹:うんうん。 酒徒:あと、そこで食べられる鳥や豚は山を走り回っていいものしか食べていないのでおいしい。単に焼いただけなのにやたらとおいしい。発酵文化には成熟さを感じますが、ただ焼いた鳥がすごくおいしいのが衝撃的で、いわゆるグルメなどの人間の英知とは対極にあるおいしさなんです。自然とは調理とはとか、そういうモヤっとしたことを考えたことがあって、ああいう考えをもう1回得たいなとは思います。 小竹:そういうところに行くと、食材がもう全然違いますよね。 酒徒:そうですね。野菜もすごく味が濃くて力強くて。そういう食材の力を感じに行きたいですね。豚の丸焼きと同じように、そのうち叶ったらいいなって思います(笑)。 (TEXT:山田周平)