「毎日食べても飽きない!」中華料理愛好家・酒徒さんが語る、家庭の新しい中華料理
小竹:舌で味は覚えているので、味付けのレシピなどもできてしまった感じ? 酒徒:これはほぼ味付けがないに等しいのでね。僕は徹底的に削ぎ落とすのが好きなので、最低限それさえ入れれば成立するというのを軸にしています。なぜかというと、そうしたときに自分の記憶と合致することが多かったから。 小竹:そうなんですね。 酒徒:本などで見たものでいろいろと足していくと、気の利いた味にはなるかもしれないけれど違うなと思うことが多かったので、僕はシンプルを持って良しとするみたいな感じがありますね。 小竹:それでお子さんも食べやすくとなると、そういった引き算の料理が合いますよね。 酒徒:そうですね。ただ、子どものことを考えて作らないというのもポリシーです。自分の食欲に突き動かされてきているので、究極的に言うと、自分が食べたいものを食べたいし作りたい。だから、それについてきてくれるように子どもを育てたいと思っています(笑)。
毎日食べても飽きない中華料理もたくさんある
小竹:『あたらしい家中華』の帯に、「鶏ガラ、オイスターソース、豆板醤、すべていりません」と書いてあるのですが、本場の中華料理でもあまり使われないのですか? 酒徒:鶏ガラは単に旨味を出すか否かの話で好みの問題だと思うのですが、オイスターソースや豆板醤は非常に地域性の高い調味料で、日本ではそれがないと中華料理にならないと思われているところに現地との違いがありますね。 小竹:なるほど。 酒徒:例えば、オイスターソースだったら広東省、豆板醤だったら四川省の家庭料理に欠かせないものであることは間違いないのですが、それを使わないで料理を作っている地域もたくさんあります。今回はもともとそれがなくても成立する料理を選んだ感じで、使う料理も中国にはたくさんあります。 小竹:noteやSNSで中華料理のレシピを発信されていましたが、本にするにあたって改めて伝えたいことはあったのですか? 酒徒:「中華料理はしつこい」とか「毎日は食べられない」などと散々言われてきて、毎日食べても飽きない料理もたくさんあるし、作り方や組み合わせ次第だという気持ちは昔からすごく抱えていたので、それを実感してもらえる内容にしたいとは強く思っていました。 小竹:本の中で私が一番感動したのは「茹で鶏」です。簡単に作れておいしいのですが、骨から茹でるのがやっぱりいいのですか? 酒徒:そもそも中国は骨を外した鶏が全然売っていなかった。鶏は塊か、せめて半分で買ってくるものだから、骨なし鶏で作るという発想自体がないんです。骨から茹でたほうがおいしさが広がるし、茹で汁も出汁が出て味が良くなるので、骨付きを使わない手はないかなと思います。 小竹:私は「レモン鶏」にしたのですが、本当においしくて私の中でイチ押しです。 酒徒:ありがとうございます。丸鶏はそれを基本形として、そこからちょっと味付けを変えることで3~4種類くらい違う料理に展開していけるところも面白いので、まとめて茹でておくといろいろ使えますね。 小竹:叩ききゅうりににんにくと酢を和えるだけでいい「きゅうりの冷菜」も好きです。うちの子どもがすごく気に入っていて、よくリクエストされます。 酒徒:うれしいです。生のにんにくって辛くて嫌がられそうですけど、うちの子も2歳の頃から食べています。中華の冷菜はちゃんと味がおいしい上にすぐできるので、何品も並べるのもそんなに苦でもないですよね。 小竹:実際に中国でもそういったシンプルな料理が多いのですか? 酒徒:いろいろと具を入れて1つの炒め物を作ってそれを食べて終わりということはあまりないですね。日本は割とそういう炒め物が多いと思うのですが、1~2個の食材を使ったシンプルな冷菜なり炒め物を何皿か作って、みんなで食べるというのが中華の基本形なのかなと思います。 小竹:野菜1品でできるというのは、中華料理のハードルがグッと下がった感じがしました。 酒徒:間違いないですね。八宝菜を作ろうと思ったら、僕でもめんどくさいと思いますけど、1~2個炒めるだけなら冷蔵庫の余り野菜でできる。向こうの人も日々働きながら料理を作っているので、そういうシンプルさが実際はメインになっているということですね。