マラケシュ「ラ・マムーニア」は、大人のアラビアンナイトを叶える“おとぎホテル”でした
筆者は庭を前にする「パーク・エグゼクティブ・スイート」(62-29㎡)に宿泊。バルコニーに出ればモロッコの匂いと光を感じ、遠くでコーランが響きます。不思議なのが、街よりも客室バルコニーの方がアフリカっぽい空気を感じたこと。約3200㎡もの庭園をもつ「ラ・マムーニア」だから、砂漠、森、太陽、街の混沌までも、すべて混ざった空気に包まれる感覚といいましょうか。
このホテルでは時計を見ず、太陽の変化で時間の流れを感じたい。独特の光が入ってくるから、客室の電気は暗くなるまでつけない。街歩きから戻って氷を頼んだ際、卓上に置かれたバラと氷がとても豪華で美しいものに見えたのも「ラ・マムーニア」マジックです。
3万㎡の庭には、700本のオレンジの木、5000本のバラ、200本のオリーブ、6種の椰子の木が育ちます。朝夕に散歩をすれば、漂うオレンジの花の香りに、長年育まれた豊かさを感じるもの。
それを喜ぶように鳥たちは賑やかに鳴き、砂漠の国に咲く花はどこか逞しい。かつて王が息子に贈った庭園は、いまは70人の庭師によって守られています。
お篭りでも飽きない多彩なレストラン
ダイニングは主に4つ。イタリア料理の「イタリアンbyジャン-ジョルジュ」、モロッコ料理の「ル・モロカン」、アジア料理の「アジアティークbyジャン-ジョルジュ」、朝食などをいただく「ル・パビリオン・ドゥ・ラ・ピシン」で、3泊した今回はすべて訪問。最初に訪れた「イタリアンbyジャン-ジョルジュ」は白と緑を基調として、庭園の延長のサンルームのようでした。
そこでメニューを開くと、意外や前菜に「生牡蠣」の文字。実はモロッコ前にいたスペイン南部で、「マラケシュでは美味しい魚介は食べられないだろう」との偏見で魚介を食べ納めしていました。産地を聞くと、ダフラという西サハラの港湾都市で獲れた牡蠣。これが海のパワーを感じる滋味深さで、嬉しいギャップに。ダフラはビーチリゾートでもあるとスタッフが教えてくれて、食材から新たな土地を知る、異国での理想の食体験の瞬間でした。