マラケシュ「ラ・マムーニア」は、大人のアラビアンナイトを叶える“おとぎホテル”でした
「ル・モロカン」は、エキゾチックにドレスアップした女性や、麻の白シャツを着た男性が似合いそうなリヤド(邸宅)造り。中に入ると、もうひとつのアラビアンナイトが始まります。
メインはやっぱりタジン料理。7種から選んだのは、「ベルベルスタイルのラムタジン」。タジンは先住民族であるベルベル人が作り始めたとされ、これはサフランやスパイスが効いたスープが肉汁と融合したひと皿でした。ホテルオリジナルのワイン「アイコン」は非売品でここでしか飲めないので、タジンとの相性もお楽しみあれ。
バーは3軒あり、表情がまったく異なるので全制覇したいところ。他にもアフリカ初の「ピエール・エルメ」のサロンやブティックも揃い、連泊でも飽きることはありません。
ここまで飲食店が豊富ですが、ホテルからジャマ・エル・フナ広場は歩いてほんの10分なので、屋台メシも一度は挑戦を。 筆者は魚介の揚げ物屋でイカフライをオーダーしてみました。どんな油か謎だったけれど、ちょうど新しい油を注ぐタイミングで安堵。トッピングはフレッシュのトマトソースとライム、青唐辛子。食べると絶妙な揚げ加減でイカから湯気が立ち、パンに挟んでトマトソースをたっぷり入れてイカバーガーにするもよし。
そして、喧騒絶えぬ街から「La Mamounia」に戻ってくると、一転して静寂。コンシェルジュにフナ広場を楽しんだことを伝えると嬉しそうな顔をみせ、やっぱりここは街と一体化したホテルと実感したのでした。
もうひとつマラケシュらしさを感じるのが、かわいい猫たちがホテル内で伸び伸び過ごしていること。オレンジの並木道を闊歩したり、大理石の上で昼寝をしたり、なんとゴージャスな住まいをもつ地域猫でしょう。聞けばスタッフが餌や水をやり、ワクチンも済ませているとのこと。「猫の街」とも言われるマラケシュで、猫たちはエレガントなホテルにチャーミングさを与えていたのでした。
以上が、「ラ・マムーニア」で印象に残ったシーンの数々。アフリカ大陸は遠い存在でしたが、「ラ・マムーニア」に滞在したことでぐっと心の距離が近づきました。盛りだくさんのホテルなので実はやり残したことがあり、年末にでも再訪してしまいそうな予感。モロッコで一番優美な香りを放つ庭園が、既に懐かしくなっています。
■ ラ・マムーニア
1泊1室 4335MAD(6万8000円)~ ※税別、要事前決済 日本での問い合わせ/リーデイング・ホテルズ・オブ・ザ・ワールド
文/大石智子