発達障害の女性の未来を拓いた、「できることに光を当てる」eスポーツの可能性
ユニバーサルデザイン化された「eスポーツ」=UDe-スポーツ
河野さんが就労継続支援A型へ移行するきっかけになったeスポーツは、コンピューターゲームを使った対戦をスポーツ競技としてとらえるもので、2000年ごろからその名称が使われ始めた。いまでは多くの人がプレーし、国内でも300人以上がプロとして活躍している。 ただ、その多くは若者で、障害者や高齢者にはあまり馴染みがない。そうした現状を受け、年齢や障害の有無に関係なく、誰もが気軽に参加できるようにと工夫されたのが、「ユニバーサルデザイン化されたeスポーツ」=UDe-スポーツだ。 2、3色のボタンを押す簡単な操作によって画面上のキャラクターが動き、タイムや点数を競う。「アニマルリレー(徒競走)」や「玉入れ」「もぐらたたき」「だるま落とし」など全11タイトルが揃い、現在は全国でおよそ60の障害者施設、高齢者施設などで活用されているという。「GAMADUS」では、eスポーツを経て昨年8月からUDe-スポーツを採用した。 障害者の方でも簡単に扱えるこうしたオリジナルゲームやコントローラーの企画・開発、eスポーツやパソコン操作のための福祉用具の提案とサポートを行っているのが、株式会社ハッピーブレイン(熊本県合志市)だ。同社は、医療、介護の現場で15年にわたり理学療法士として仕事をしてきた池田竜太さんが2020年8月に起業。障害者や高齢者が社会参加できていない現状を目の当たりにしたことが起業のきっかけだという。 「自宅で寝たきりの方に限らず、障害者の方たちは社会との接点が少なく、就労するための技能をなかなか獲得できない現実があります。eスポーツを通じてそうした方たちが外部と交流する機会を作り、楽しみながら競うことで挑戦する心を養い、パソコン操作の技能などを習得してもらえば、社会参加や就労支援につながるのではという思いがありました」 そうした思いを背景に、昨年5月、一般社団法人UDe-スポーツ協会を設立。1年が経った今年5月25日、全国9カ所の福祉施設をオンラインでつないだ「第1回UDe-スポーツ全国施設対抗戦」を開催した。