住民の「目」と防犯理論を駆使した、治安向上を図る地域ぐるみのチャレンジ #こどもをまもる
子どもに対する声かけ事案や痴漢など、スマホには毎日のように不穏な通知が飛び込んでくる。新学期を迎え、改めて周辺での子どもたちの安全を考えたい時期だ。今回、東京都内の防犯ボランティアを取材した。見知らぬ大人からの声かけもはばかられる昨今、ペットを通じて交流を図る人々や、犯罪学からのアプローチで地域を守る人々の姿があった。(取材・文・撮影:志和浩司/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
愛犬との散歩で子どもたちを見守る目を増やす わんわんパトロール
ある平日の16時すぎ。古い町並みと高層マンションが混在する東京都中央区日本橋の一角で、子どもたちの声が響く通学路や公園を9人の愛犬家と10匹の犬の一団が通っていく。 「あっ、わんわんパトロールだ」 おそろいのベストと「防犯」の腕章を認識したのだろう、子どもたちから声があがった。 「わんわんパトロール」は地域の愛犬家が犬と散歩をしながら、近隣の環境を目視で確認する活動だ。仕組み自体は2003年に世田谷区成城警察署が最初に発案したもので、そこから全国に広がった。 ここ日本橋でも、防犯ボランティア団体「浜ランwanrun(ワンラン)会」が毎週木曜、下校時間に合わせて「わんわんパトロール」を集団で実施している。見回り活動のコースや時間帯は、警視庁防犯アプリ「Digi Police」(デジポリス)を使って記録している。なにか不審な行為や物を発見した際には、地元警察へ通報することもある。
「浜ラン会」のメンバーは、日本橋にある区立の浜町公園のドッグラン(通称・浜ラン)の利用者たちが中心。30代から70代までの22人で構成され、主婦、会社員、自営業など職業もさまざまだ。 会長の若山光一郎さんによると、結成の目的は地元行政への恩返しだという。中央区には無料のドッグラン施設が3カ所もあり、愛犬家が暮らしやすい環境だ。わんわんパトロールを知り、自分たちでもできるのではないかと考えた。 「散歩を兼ねて子どもたちを見守る目を増やすということであれば、参加のハードルも低いのではないかと考えました。和気あいあいと歩き、『この街にはこういう人たちがいるんだよ』と、知ってもらえれば」 参加して2年になる中嶋京子さんもささやかな手ごたえを実感する。「『おばちゃん、犬かわいいね』と子どもから声をかけられたり、親御さんから激励されたりすることもあって、少しずつ浸透していると感じます」 ドッグランから自宅への帰路に児童館などがあるメンバーには単独の見回りが任されることもある。散歩の時間帯やコースを決め、事前申請をした上で見回りをする。メンバーの宮川英子さんは、危険な場所にフォーカスを当ててパトロールしていると話す。「時間帯や日照によって危なくなる道に気をつけている。校舎の裏側などは正門と比べ、人通りが少なく暗い場所も多い」 こうした「場所に注目する」パトロール方法は、犯罪学の観点からも理にかなっている。