なぜ井上尚弥は約1億円のファイトマネーを稼ぐのか…20日米ラスベガスでのダスマリナス防衛戦に死角なし
WBA世界バンタム級スーパー、IBF世界同級王者の井上尚弥(28、大橋)が6月19日(日本時間20日)、米ラスベガスのバージンホテルズ・ラスベガスで行われるIBF同級1位、マイケル・ダスマリナス(28、フィリピン)との指名試合に向けてのオンライン会見を行った。この試合のファイトマネーは前回に続いて100万ドル(約1億900万円)。ダスマリナスは12連勝中とはいえ4団体の世界戦経験もない無名挑戦者であることを考えると異例の金額だ。201911月のWBSS決勝で名勝負の末、井上が判定勝利した“レジェンド”ノニト・ドネア(38、フィリピン)が衝撃のTKO劇でWBC世界同級王者となり4団体統一を狙う井上にとってモチベーションもアップした。「体的には100%の仕上がり」と断言する“モンスター”はラスベガスで再び強烈なインパクトを全米に与えるつもりだ。
「ドネア戦?勝てば必然的にそういう流れになる」
やり残したことはない。 本来なら疲労がピークの時期のはずだが、2度目のラスベガス出発を5日後に控えた2団体王者にその影は見られなかった。 「あと2週間で体重調整だけ。体的には100パー仕上がっている。気持ち的にも100パーにもっていけるようにするだけ」 5月29日にサウスポーの南出仁(セレス)を最後にスパーリングを打ち上げた。ダスマリナスが長身のサウスポーであることから、ここまで階級が上ながら似たタイプのホープ、木村蓮太朗(駿河男児)らとスパーを重ねてきた。 「トータルのスパー数?今回多いですね。自分の体調を含めて動きがよかったので、普段は4ラウンドのスパーを6、8と増やしてやった」 9日に出発。現地では、同行する弟で元WBC世界バンタム級暫定王者の拓真、従兄で元WBOアジアパシフィック・スーパーライト、日本同級王者の浩樹とマススパーを行い、減量と同時に最終調整を行う。昨年10月にラスベガスでジェイソン・マロニー(豪州)をTKOで倒した際と同じ調整パターンだ。 指名挑戦者のダスマリナスは拓真や元WBC世界バンタム級王者、山中慎介らのスパーリングパートナーとして来日経験がある長身のサウスポー。IBO世界同級王者になったことはあるが、マイナー団体で4団体の世界挑戦経験はない。あえて世界的無名のフィリピン人の挑戦を受けた理由は、タイトルの管理に厳格なIBFの指名試合を拒否すればタイトルを剥奪され、井上が目標とする4団体統一の野望が達成できないからである。 その4団体統一戦線に異変もあった。2019年11月のWBSS決勝で名勝負を演じたドネアが、弟の拓真を蹴散らしてWBCのベルトを守ったノルディーヌ・ウバーリ(仏)を“伝家の宝刀”の左フックで2度ダウンを奪い、新王者となったのである。ドネア戦で井上は注意していたはずの左フックを序盤に浴び右目の眼窩底骨折を負い、ボディでダウンを奪いながらもKO決着をつけることはできなかった。試合直後には、ドネアとの再戦に興味を抱いていなかったが、5階級制覇王者のレジェンドが復活を遂げてベルトを巻き再戦の資格をもぎとったとなれば話は別。 「率直に強かった。4団体統一には必要なベルト。次の試合に勝つことができれば、必然的に、そういう流れになる」 4つのベルトをまとめるには避けられない相手。ドネアもリング上で井上とのリベンジマッチをアピ―ルした。