ついに世界へ。なぜロンドン五輪銅メダリスト清水聡は21歳ホープ森武蔵を打ち破りアジア“最強”ベルト統一に成功したのか?
ボクシングのロンドン五輪銅メダリストでOPBF東洋太平洋フェザー級王者の清水聡(35、大橋)が21日、後楽園ホールでWBOアジアパシフィック同級王者の森武蔵(21、薬師寺)と王座統一戦を戦い、3―0の判定勝利で2つのベルトを手にした。序盤は、森の超接近戦に苦しんだが、6ラウンドから自分の距離で戦いペースをつかむと無尽蔵のスタミナを武器に逃げ切った。フェザー級は強豪世界王者がひしめく“戦国階級”だが、大橋秀行会長は、「次は世界」とGOサイン。一方、13戦目にして初黒星を喫した森は「この1敗は重い」と自らの進退について明言を避けた。
序盤は森武蔵が超接近戦でリード
序盤を支配したのは森武蔵だった。 「清水さんとノイナイとの試合を見ると、足を使うことは有効だと思った。ボディからのクロスを狙った。でも、そこにカウンターを合わせられたので危険だと思った。もうひとつのプランだった超接近戦に2ラウンドから切り替えたんです」 清水が2019年7月に倒されたジョー・ノイナイ(フィリピン)戦を参考に足を使い、ロングからクビから下を狙い打ち、左のクロスにつなげようとしたが、清水の左カウンターを何発かもらったため、2ラウンドから作戦を切り替えた。左右のボディを打ってはくっつき、右のフックを振ってはくっつきの泥臭い超接近戦を仕掛けたのである。 クリンチではない。まるでムエタイの首相撲のごとく、体を密着させ、清水の体力を削りにいく。これが功を奏した。入り際のパンチでポイントを稼ぎ、身長差が9センチある清水の距離を潰しカウンターを封じた。2ラウンドはジャッジの2人、4ラウンドは3人共に森を支持した。4ラウンドが終わった時点での公開採点は「39ー37」で森、清水と分かれ、もう1人は「38-38」。ここまでは三者三様のドローだった。 ドーピング疑惑の潔白が証明された尊敬する4階級制覇王者の井岡一翔からは「戦略を立て、それをしっかりと遂行せよ」とアドバイスをもらっていた。師事するトレーナーのサラス氏も同じだ。ここまでは森は勝利のミッションを確実に遂行していた。 「いけると思った」 一方の清水は、「(ポイントを)取られているな、悪いなという感じがした。相手にとってシメシメの展開だったと思う」と、超接近戦は不利だと感じていた。事前に「くっついてくる」との森サイド戦略も耳に入っていたが、対応できず、5ラウンドには、ロングの左フックをヒットされた。 だが、6ラウンドで流れが変わる。