岸田文雄首相が就任会見(全文1)目指すのは新しい資本主義の実現
成長戦略と分配戦略を両輪に
私は成長と分配の好循環を実現し、国民が豊かに生活できる経済をつくり上げていきます。また、新型コロナというピンチをチャンスに変え、希望のある未来を切り開いていくことが重要です。なかなか進まなかったデジタル化の加速など、新型コロナは社会変革の芽ももたらしました。この芽を大きく育て、コロナ後の新しい社会の開拓を実現していきます。そのために、「新しい資本主義実現会議」を立ち上げ、ポストコロナ時代の経済・社会ビジョンを策定し、具体的な政策を作り上げていきます。新しい資本主義を実現していく車の両輪は成長戦略と分配戦略です。 成長戦略の第1は科学技術立国の実現です。科学技術とイノベーションを政策の中心に据え、グリーン、人工知能、量子、バイオなど、先端科学技術の研究開発に大胆な投資を行います。第2にデジタル田園都市国家構想です。地方からデジタルの実装を進め、新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めます。第3は経済安全保障です。新たに設けた担当大臣の下、戦略技術や物資の確保、技術流出の防止に向けた取り組みを進め、自立的な経済構造を実現していきます。第4は人生100年時代の不安解消です。働き方に中立的な社会保障や税制を整備し、勤労者皆保険の実現に向けて取り組んでまいります。
3つの覚悟を持ち、毅然とした外交安全保障を展開
次に分配戦略です。分配戦略の第1は、働く人への分配機能の強化です。企業で働く人や下請け企業に対して成長の果実、しっかり分配されるよう環境の整備、進めてまいります。第2に中間層の拡大、そして少子化政策です。中間層の所得拡大に向け、国による分配機能を強化いたします。第3に公的価格の在り方の抜本的な見直しです。医師、看護師、介護士さらには幼稚園教諭、保育士、こうした方々など、社会の基盤を支える現場で働く方々の所得向上に向け、公的価格の在り方の抜本的見直しを行います。第4の柱は財政の単年度主義の弊害是正です。科学技術の振興、経済安全保障、重要インフラの整備などの国家的な課題に計画的に取り組んでまいります。 外交安全保障は第3の重点政策です。日米同盟を基軸にし、世界のわが国への信頼の下、3つの覚悟を持って毅然とした外交安全保障を展開してまいります。第1に自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的な価値を守り抜く覚悟です。同盟国、同志国と連携し、自由で開かれたインド太平洋を強力に推進してまいります。第2に、わが国の平和と安定を守り抜く覚悟です。わが国の領土・領海・領空、そして国民の生命と財産、断固として守るために、ミサイル防衛能力を含む防衛力や海上保安能力の強化に取り組んでまいります。拉致問題は最重要課題です。全ての拉致被害者の1日も早い帰国を実現すべく、総力を挙げて取り組みます。私自身、条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う覚悟です。 第3に地球規模の課題に向き合い、人類に貢献し、国際社会を主導する覚悟です。被爆地・広島出身の総理大臣として核兵器のない世界に向けて全力を尽くしてまいります。また地球温暖化対策の推進や信頼性ある自由なデータ流通、DFFTなど新たなルール作りに向けて世界をリードしていきます。今、申し上げた以外にもわが国においてはデジタル技術を活用した個別教育の推進、農林水産業の成長戦略化、地球に寄り添った多様で豊かな農林水産業の構築、災害に強い地域づくり、観光立国の実現など、課題が山積しています。また、東北の復興なくして日本の再生はありません。この強い思いの下で東日本大震災の被災地、中でも福島の復興・再生に全力を注いでまいります。私の内閣は新時代を共に創る、新時代共創内閣です。新しい時代を皆さんと共に創ってまいります。