なぜ朝倉未来はRIZIN異色のPPV大会で珍しい「寝技勝負」を選び萩原京平に3-0判定での”圧勝再起”を飾ることができたのか?
格闘技イベント「RIZIN」が新たに挑戦するPPV(有料配信)方式のスタジオマッチ「RIZIN LANDMARK」の旗上げ戦が2日、都内で開催され、68キロ契約のRIZIN・MMAルール(5分×3回)で行われたメインでは、朝倉未来(29、トライフォース赤坂)が、萩原京平(25、SMOKER GYM)をグラウンドの攻防で圧倒して3-0の判定勝利を飾った。朝倉は6月にクレベル・コイケ(ボンサイ柔術)の三角絞めに落とされ失神1本負けを喫していたが、その再起戦で、進化した姿を見せつけた。試合後、昨年11月のRIZINフェザー級王座決定戦で判定負けをしたRIZINフェザー級王者の斎藤裕(33、パラエストラ小岩)に対戦を要求。斎藤も受けて立つ意向を示した。斎藤が10月24日の「RIZIN.31」で予定されている初防衛戦(相手未定)をクリアすれば大晦日大会で再戦が実現しそうだ。
打撃戦のリスクを排除して勝利にこだわる
サイドポジションをキープした朝倉が危険極まりないヒジを萩原の顔面に落としながらニヤっと笑った。 「ちょっと動けよ」 勝利を確信した勝負師の戦慄の笑顔である。 「萩原君と目が合って。疲れていたので言ったんです。(それで)ちょっと笑ってしまった感じです」 左目をカットした萩原は身動きできなかった。 「1本取りたかった」という朝倉のフィニッシュは、15分間の戦いで成就できなかったが、試合終了のゴングと同時にもう勝者と敗者は明らかだった。 3-0判定を告げられても朝倉は今度はニコリともしなかった。 進化を遂げた“キラー”朝倉未来のお披露目だった。 萩原の長所を完全に殺した。 「萩原選手の弱い部分はそこ(寝技)。そういう展開を選ばざるをえなかったというだけ」 戦略家の朝倉らしい選択肢。 スタート直後にほんの数秒間、ローキックの交換をしただけで、片足タックルを仕掛けてテイクダウンを奪う。萩原が得意とする打撃戦には応じずグラウンドの展開に引き込んだ。 萩原は一度は立ち上がり、胸を踏みつけるが、組みついた朝倉は、今度は下半身をクラッチしてから持ち上げて再び萩原をマットに叩きつけた。 「カーフをバンバン蹴りたかったが、その前にテイクダウンを仕掛けられ、向こうのペースになった」とは萩原の試合後の回想。 2ラウンドには、再びタックルからのテイクダウン。バックをとり、チョークを狙い、時間をかけて萩原の体力をジワジワと消耗させていく。 「(寝技への)対応が上手くなっていた。柔術の先生が教えているので寝技はそんなに成長してないと思うけれど、一本を取らせない力が上がっていた」 朝倉は、萩原の寝技の技量を冷静にはかっていた。 萩原もこの展開は想定していた。ブラジリアン柔術の日本人最年少での黒帯保持者で、柔術の大会でクレベル・コイケに勝利したこともある岩崎正寛氏の指導を受け作戦も授かっていた。 「バックをとらせて立ち上がる作戦だったが、その展開にさせてもらえなかった。相手が上手」。スタンディングに展開できたのは一度だけ。「フィジカルは感じなかった」とも萩原は言うが、その後は、朝倉のパワーとテクニックでマットに塩漬けにされた。 RIZINの判定は、各ラウンドの採点の合計ではなく、3ラウンドのトータルで評価されるが、萩原は「1、2ラウンドはとられていたのが3ラウンドで仕掛けていこう」と一発逆転を狙いプレスをかけた。