なぜ朝倉海はRIZINバンタム級TMでボンサイ柔術”第4の男”をKOで仕留めることができず苦戦したのか…右拳に起きた異変とは?
総合格闘技イベントの「RIZIN.30」が19日、さいたまスーパーアリーナで開催され、注目のバンタム級トーナメントの2回戦では、朝倉海(27、トライフォース赤坂)が、ボンサイ柔術の“第4の男”、アラン“ヒロ”ヤマニハ(35、ブルテリア・ボンサイ)と対戦。途中右拳を痛めながらも3-0判定で勝利して大晦日に同会場で開催される準決勝、決勝へコマを進めた。ベスト4の顔ぶれは、朝倉、井上直樹(24、セラ・ロンゴ・ファイトチーム)、扇久保博正(34、パラエストラ松戸)、瀧澤謙太(26、フリー)の4人。朝倉がV最有力候補だが残り3か月強で、痛めた拳がどこまで回復するのか。初代王者になるために“爆弾“を抱えることになった。
「狂暴に戦う」の予告に嘘はなかった。 朝倉海はゴングと同時にプレスをかけ右を打ち込んだ。ボクシングの元WBA世界スーパーフェザー級王者、内山高志“仕込み“のワンツーを浴び、ボンサイ柔術”第4の男”はロープに吹っ飛ぶほどだった。片足タックルにも粘り腰でテイクダウンを許さず、コーナーに追いつめると三日月蹴りをみぞおち付近を狙ってお見舞いした。 「三日月蹴りに(パンチで)ボディを効かせてからの上への攻撃。戦略通りにはできたが、ギリギリで力を逃がされたり、(思った以上にアランが)頑丈だったりした」とは、試合後の朝倉のコメント。 戦略家である兄の未来から授けられた“ボンサイ柔術潰し”の秘策が決まり、朝倉はスタートから圧倒していた。 3分10秒過ぎには6センチの身長差を生かして打ち下ろした右のストレートがアランの顔面を捉えた。アランは右膝をつき“ダウン“。すぐさま立ち上がったが、朝倉はラッシュ。テイクダウンを取り、パウンドを浴びせようとするが、逆に下から足を絡められ、フィニッシュに持っていくことはできなかった。 「絶対に倒して勝ちたいという思いが前面に出過ぎてツメが雑になった」 朝倉が決着をつけるのは時間の問題に思えたが、2ラウンドに入ると、突然、距離をとってプレスを緩め、一気にペースダウンしたのである。 実は、1ラウンドの終盤にアクシデントが起きていた。 「右の拳を怪我してしまった。折れているかどうかは病院にいかないとわからないが、右手に力が入らなくなった。距離をとって戦うことにシフトした」 戦略の変更を余儀なくされたのである。 アランも「何かを痛めただろう」と気がついていた。 肘を使ったブロックに何かが激突して破壊した感触があったのである。ただ「右手を痛めたとは気がつかなかった」という。異変を隠すのは一流ファイターの条件である。 それでも朝倉はKO決着をあきらめていなかった。 「左のボディや足を効かせて攻めていこう。最悪、怪我をしてもいいかもと右も打った」 朝倉は痛めた右を完全に封印したわけでもなかった。 ボンサイ柔術に負けるわけにはいかなかった。