なぜ阪神の佐藤輝明は60打席ぶりヒットを打つことができたのか…V争い占う「関東ロード9番勝負」初戦白星に貢献
横浜DeNAバッテリーの意識としては、ボールと判定されたことで、ひとつ中にストライクを入れたくなる。しかも、三浦監督が、試合後に、怒りを込めて「坂本は立ち上がりに変化球が高めに浮き、あまりにも悪すぎた。悪いなりに修正することもできなかった」と語気を強めたほどの状態。カウント2-2から、ボール2つ分ほど甘くへ入ってきたカットボールに佐藤はバットを合わせた。一塁手の牧のグラブが届かなかった力強い打球はライトへと抜けるタイムリーヒットとなった。一塁ベース上で佐藤は右手を掲げて笑った。阪神ベンチも祝福の声で盛り上がった。やはり怪物ルーキーはポジティブな風をベンチに運ぶムードメーカーだ。 不名誉な更新を続けていた連続ノーヒットのワースト記録は59でストップ。実に8月21日の中日戦以来となる「Hランプ」をスコアボードに輝かせた。打点を刻んだのも8月26日の中日戦での犠飛以来。4月に「鳩サブレー」の看板を超えていく衝撃の場外弾を放つなど相性のいい“ハマスタ“での復活に期待して佐藤を我慢起用した矢野監督の期待に応えた。 さらに佐藤はランナーとしても仕事をした。二死一、三塁から、梅野への3球目にわざとスタートを遅らせてディレードスチールを仕掛けて、戸柱のスローイングを誘い、セカンドベース手前で止まって、わざと挟まれ、小野寺のホームスチールを助けた。これで4点目である。小野寺は、ほぼ送球と同時スタートを切っていたから横浜DeNAサイドから見れば、戸柱が偽投、あるいは、ピッチャーカットをさせていれば、防ぐことのできていた4点目だった。目標のあるチームと、それがないチームの集中力の差が、如実に表れた1回の攻防で、もうゲームの行方は決まってしまった。 今季3勝0敗、防御率1.67と対横浜DeNAに抜群の相性を誇る青柳が大量リードをバックに6回2失点とゲームメイクした。青柳は、この5試合勝てなかったが、警戒しすぎてボールが先行し、狭くなったストライクゾーンで勝負せざるを得なくなってやられるパターン。“サトテル“が起爆剤になった4点が”精神安定剤”となったのである。 横浜DeNAは、主砲のオースティンが左足ふくらはぎの張りを訴え、5回の守りから大事を取ってベンチへ下がった。病院に行くほどの重症ではないそうだが、ベイスターズ打線を恐れていた阪神にとってはラッキーな追い風となった。