なぜ阪神の佐藤輝明は60打席ぶりヒットを打つことができたのか…V争い占う「関東ロード9番勝負」初戦白星に貢献
阪神が5日、横浜スタジアムで行われた横浜DeNA戦に5-2で快勝、絶対に落とせない「関東ロード9番勝負」の初戦をモノにした。8月24日以来、5試合続けて勝ち星に恵まれていなかった青柳晃洋に11勝目がつき、4番の大山悠輔が19号ソロを含む3安打2打点と暴れたが、チームにとって大きかったのは不振の“怪物ルーキー“佐藤輝明が、約1か月強、60打席ぶりとなるヒットを初回のタイムリーという最高の結果でマークしたことだ。まだ打撃の形は良くないが、スランプ脱出のための”最良の処方箋”は1本のヒットだと言われている。佐藤が1ゲーム差で追う首位のヤクルトを逆転する切り札となるか。
追い込まれてから見極めた外角ストレート
横浜DeNAの先発左腕の坂本は細心の注意を払っていた。 対阪神に3勝1敗と相性はいいが、近本には.375と打たれ、8月26日の試合では先頭打者アーチを許していた。「近本選手を塁に出さないこと。とくに初回の出塁率が高い」と警戒していた。 だが、立ち上がりの制球ミスを近本が見逃さない。甘く入った2球目のストライクを強打。さらに続く中野も浮いた変化球をジャストミートして右中間へ。打球は抜けなかったが、オースティンの返球が、中継の内野手にまで返らずに乱れる間に一気に近本が先制ホームを踏む。 無死二塁と続くチャンスにマルテが倒れるが、「1、2番がいい流れを作ってくれた。なんとか返そうと」と、打席に入った大山がレフト前へタイムリー。二死から小野寺が四球でつなぎ、一、二塁で、59打席連続ノーヒットの佐藤に打順が回ってきた。 1球目に外角低めのカットボールを空振り、2球目はインハイのストレートに中途半端に手を出して簡単に追い込まれた。対角線の配球は、この59打席、佐藤が打ち取られている基本パターンである。横浜DeNAバッテリーの攻めは間違っていなかった。 ここまで佐藤に対しても打率.375と打たれている坂本は「下位打線にも気を抜かず全力で抑えにいく」と意識していた。 だが、ここからの佐藤が一味違っていた。 外角低めの誘いのカットボールを我慢。続けて1-2からストライクと判定されてもおかしくなかった外角ストレートも見送った。坂本が思わずベンチに帰ろうとした好球で手が出なかったのが本音だったのかもしれないが、結果として見極めた1球が、佐藤のスランプ脱出へのポイントとなる。