50代から始まる「脳の老化」を防ぐために、脳科学者が勧める食事術
「血糖値スパイク」が脳の力を低下させる
とはいえ、糖質を含む食品をたくさん食べればいいわけではありません。糖質を摂り過ぎると「血糖値スパイク」という現象が起き、かえって脳がエネルギー不足に陥るからです。 糖質の摂取によって血中に大量のブドウ糖が流れ込むと、急激に血糖値が上昇します。このままでは細胞に深刻なダメージを与えるので、脳が血糖値を下げろと指令を出し、それを受けて膵臓がインスリンというホルモンを放出します。すると今度は血糖値がジェットコースター並みに急降下する。これが血糖値スパイクです。 これにより血中のブドウ糖が一気に減少し、脳にエネルギーを供給できなくなります。皆さんも満腹になると頭がぼんやりしたり、やる気が出ずダラダラしてしまった経験がないでしょうか。それは血糖値スパイクが引き起こす低血糖が原因です。つまり、たくさん食べても肝心の脳にはエネルギーが届かず、パフォーマンスも上がらないという残念な結果になるのです。 では糖質を摂っても血糖値スパイクを起こさず、脳に安定してエネルギーを届けるにはどうすればいいのか。この問題を解決するのが「低GI食」です。 GIとは、食品に含まれる糖質がどれだけ血糖値を上げるかを示す数値で、数値が高いほど食後の血糖値が急激に上がり、低いほど食後の血糖値の上昇が緩やかになります。よってGIが低い食品をうまく取り入れれば、血糖値スパイクを起こさずに必要な糖質を摂取できて、仕事中の集中力や記憶力を高めることが可能になります。
中高年の認知機能が 「低GI食」で上がった!
低GI食が脳のパフォーマンスに与える効果は、様々な研究で明らかになっています。スウェーデンのランド大学が49歳から71歳を対象に行なった研究では、朝食で低GI食を摂ると、2時間後に行なった認知機能テストのスコアが上がることが確認されました。 また、フランスのナンシー大学が21歳前後の若い成人を対象に行なった研究でも、朝食に低GI食を摂ると、2時間半~3時間後の記憶力が向上したと報告されています。若者から中高年まで、どの年代においても低GI食が脳の働きにポジティブな効果をもたらすことが示されたと言えます。 低GI食は糖質が体内に吸収される速度が遅いため、摂取後の血糖値が緩やかに上昇し、かつ上昇した状態でしばらく推移します(上図)。つまり長時間に渡って脳にエネルギーを供給できるので、仕事や学習を長く続けても脳のパフォーマンスを維持しやすいのです。 一方、食後の血糖値が急激に上がる高GI食の場合、脳にエネルギーが届くのは摂取した直後だけ。あとは血糖値が一気に低下するので、1~2時間後にはほとんど脳にエネルギーを供給できなくなります。 それどころか、高GI食は翌日のパフォーマンスにも悪影響を及ぼすことがわかっています。米国ノースカロライナ州立大学心理学部の博士らを中心とした研究によれば、夕食に高GI食を摂った人は、次の日の仕事の効率が下がると報告されています。 具体的には、人を助ける「援助行動」が減り、仕事を怠ける「離脱行動」が増える傾向が見られたそうです。前者はチームワークを乱して組織全体のパフォーマンスを低下させますし、後者は個人のパフォーマンスを大きく下げます。 加えて高GI食は糖尿病のリスクを高めたり、身体に脂肪がつきやすくなったりと、健康面での懸念もあります。ビジネスパーソンが心身の健康を保ち、集中力や記憶力を継続的に高めて仕事で成果を出すためにも、ぜひ普段の食生活に低GI食を取り入れることをお勧めします。