50代から始まる「脳の老化」を防ぐために、脳科学者が勧める食事術
40~50代ともなると、「若いときほど物事を記憶できなくなった」「頭がてきぱき働かず仕事の効率が落ちた」「夕方を過ぎると気力がもたなくなった」という人も多いだろう。しかし、それら脳の衰えは、「食事」の質を見直すことで改善できるという。『THE21』2024年12月号では、長年にわたり、成功者たちの脳を研究してきた西剛志氏に、50代からでも間に合う「脳を蘇らせる食事法」を聞いた。(取材・構成:塚田有香) 健康診断で必ずチェックすべき「4つの数値」 ※本稿は、『THE21』2024年12月号特集「「脳」と「心」のトリセツ」より、内容を一部抜粋・再編集したものです。
良い習慣を身につければ、脳のピークを維持できる
40代や50代になると、以前と比べて集中力や記憶力が低下したと感じることが多くなります。その理由は、脳が持つ力にはピークの年齢があるためです。 例えばハーバード大学の研究結果によると、集中力が最も高まるピークは43歳で、その後は加齢に伴って次第に低下します。また人の顔を覚える能力のピークは32歳。この頃から名刺交換した相手の顔と名前が一致しないといった変化が現れ始めます。 さらに人の気持ちを理解する共感力は、48歳でピークを迎えます。この能力が低下すると周囲からどう思われようと気にしなくなり、近所のコンビニに行くときなどに、ジャージや寝巻きのまま出かけるようになったりします。 加えて脳の働きに大きく影響するのが幸福度です。イリノイ大学名誉教授エド・ディーナー氏らの研究によると、人生の幸福度が高い人は仕事の生産性が平均で31%、売上が37%向上し、創造性に至ってはなんと300%もアップすることがわかっています。 一方、世界145カ国で幸福度と年齢の関係を調べた研究によると、40代後半から50代にかけて人生で最も幸福度が下がるとの結果が出ています。よってこの年代は、一生懸命頑張ってもなかなか良いアイデアが浮かばず、仕事のパフォーマンスも上がらないという苦しい状態に陥りがちです。 ただし、これらはあくまで平均的なデータであり、歳を取っても"脳力"を維持するケースもあります。中には80歳を超えても集中力や記憶力などの認知機能が20歳以上若い人もいて、「スーパーエイジャー」と呼ばれ注目を集めています。 高齢になっても脳のピークを長く保てる人は、脳の老化を緩やかにしたり、積極的に若返らせたりする習慣を身につけています。中でも重要なのが食習慣です。なぜなら脳を働かせるエネルギーは、食事でしか補充できないからです。 人間の脳は小さな組織で、質量は体全体の約2%しかないにもかかわらず、20~25%ものエネルギーを消費します。棋士の羽生善治さんは、1日の対局で体重が5kg減ることもあるそうです。ずっと座ったままでそれだけ減るのは、脳が膨大なカロリーを消費したということ。 もしエネルギーを十分に供給しなければ、脳はガス欠状態になり、働きが鈍くなります。やる気や集中力、幸福感に関わる神経伝達物質のドーパミンもうまく分泌されません。また、空腹が続くと脳内でアドレナリンが出てイライラし、集中力が低下します。 三大栄養素の炭水化物、タンパク質、脂質のうち、脳がエネルギーとして直接利用できるのは炭水化物の中の糖質(ブドウ糖)のみです。よって脳のパフォーマンスを高めるには、効率の良い栄養素である糖質をしっかり供給することが必要です。