【深層ルポ】記者が原子炉の下で感じたこと 廃炉・“処理水”放出の現場は今…福島第一原発
■むき出しの鉄骨も… メルトダウンが起きた原発の今
首都園に電力を供給してきた福島第一原発には6基の原発がある。あの日、稼働していたのは1号機から3号機。4号機から6号機は定期検査中だった。 1号機から3号機は津波の被害を受けて冷却装置が停止。核燃料が溶け落ちる「メルトダウン」が起きた。 発生した水素が建物の上部にたまり、1号機と3号機、それに3号機から水素が流れ込んだ4号機でも水素爆発が起きた。 最初に水素爆発が起きた1号機の上部は、今も鉄骨だけがむき出しになっている。上部では大型のクレーンが稼働し、今後は建屋全体を覆う大型カバーを設置してガレキ撤去などが進むという。 同じく水素爆発が起きた3号機の上部は、“カマボコ”のような形の構造物で覆われている。上部を覆った上で、2019年から使用済燃料プールからの燃料取り出し作業を開始し、2021年にすべての使用済み燃料を建屋外に取り出すことに成功している。 一方、それらの間に位置する2号機は水素爆発が起きず、建屋はほぼ原形をとどめている。しかし、実はこの2号機こそが、最も多くの放射性物質を漏洩して周辺の汚染を引き起こしたと、木野参事官は説明する。 2号機では、隣の1号機の爆発の衝撃で、偶然にも建屋のパネルの一部が開いた。そのため、水素が外部に排出され、爆発が回避された。しかし、1、3号機では格納容器内の気体をいったん水に通してある程度、放射性物質を取り除いてからベント(放出)ができたのに対し、2号機ではベントができず、直接、格納容器から放射性物質が漏洩したのだ。
1、2号機の間には、上半分が不自然にカットされた排気筒があることに気づく。 この排気筒は、格納容器の圧力を下げるベントの際に排気が通ったため、放射線量が高い。雨水の浸入による汚染や倒壊の恐れがあることから、2019年から2020年にかけて遠隔での解体工事が進められたという。今では上部がフタで覆われていた。 木野参事官によれば、排気筒の周辺は原子炉建屋の外で“最も線量が高い場所”。今も、ほぼ手つかずのまま草が生い茂っていた。 ちなみに、この1~4号機の周りには、汚染水が増える原因となる地下水の流入を抑えるための「凍土壁」が設置されている。 建屋全体を囲むように約1500本のパイプを深さ30メートルまで打ち込み、そこにマイナス30度の冷却液を循環させて地盤を凍らせることで、地下に長大な氷の壁が作られている。当初は効果を疑問視する声もあったが、他の対策も含めて、汚染水の発生量は1日90トン程度に減り、一時期の約5分の1まで抑えているという。