【深層ルポ】記者が原子炉の下で感じたこと 廃炉・“処理水”放出の現場は今…福島第一原発
■5号機の内部へ 青白くゆらめく燃料プールの核燃料棒
今回の視察では、事故が起きた1~3号機とほぼ同型で、事故を免れた5号機の内部にも入ることを許された。 原子炉への通路は、白っぽい無機質な色合いで、案内がなければ自分がどこにいるのかさえ、わからなくなる感覚だった。 まず、建屋の上部にある使用済み核燃料プールへ。透明な水の中でおびただしい数の核燃料棒が青白く揺らめいていた。5、6号機も廃炉が決まり、今後、運び出されることになるが、まだ、約1500本もの核燃料が保管されている。 木野参事官 「浅く見えると思いますが、プールの深さは11メートル、燃料棒が4メートルなので、上に7メートルの水がある状態です。この水が核燃料を冷却して、放射線を遮断しているわけで、水がなかったら我々は一瞬で被ばくしますよ。」 この段階では、我々はまだ防護服も着ておらず、ほぼ“むき出し”の状態で視察を行っている。胸元の線量計も、十分に安全な数値を示していた。
ただ、この先の格納容器内部では、準備した防護服や手袋、靴下などをすべて装着する。損傷はないが、線量が高い部分もあるためだ。 布製とはいえ防護服を着て、マスク、ヘルメットまで着用すると、とにかく暑い。この日は、気温28℃前後だったが、それでもすぐに汗が滴って来た。真夏の炎天下での作業では、アイスパックを防護服の下にいくつも入れるというが、それでも重労働であることは想像に難くなかった。 格納容器の内部は、頭上や足元にさまざまな配管や機器があり、思うように動けない。核燃料が入っていた「圧力容器」の真下にある作業スペースに入ると、核燃料の間に挿入して原子炉の出力を制御するための制御棒を動かす装置がぶら下がり、何度も頭をぶつけそうになった。
事故があった1~3号機では、ここに核燃料が溶け出したデブリがあり、取り出しに向けた調査のため、新たに開発されたロボットアームが使われる。構造が似ている5号機は、そのテストやシミュレーションに使われているという。 遠隔で操作するロボットアームを差し込むのは、メンテナンス用の開口部だが、直径50センチほどしかなく、想像以上に狭い。 そして、10月13日、東京電力は2号機について、この開口部のハッチを開ける作業に着手し、16日に全開したと発表した。写真では黒っぽくさび付いたボルトが切断され、金属の蓋が開かれた様子も写る。公表されたこの写真を、自分で見た5号機のあの狭いハッチと、重ね合わせるようにして見ると、その作業の困難さは容易に想像できる。 2023年度後半には、2号機から試験的に燃料デブリを取り出す。 1号機から3号機の内部には合計880トンの燃料デブリがあると推定されているが、2号機の試験的な取り出しで回収できる量は数グラム程度。ただでさえ狭く、複雑な構造である。さらに、放射線量がとてつもなく高く、破壊された格納容器内部から、大量のデブリを取り出すには途方もない時間と労力が必要だと、気が遠くなる感覚になった。