【深層ルポ】記者が原子炉の下で感じたこと 廃炉・“処理水”放出の現場は今…福島第一原発
■海面に“掘り下げられた”原子炉の立地 使われた重機も…
福島第一原発の敷地は約350万平方メートル、東京ドーム約75個分に相当する。その広大さゆえ、敷地内でも移動に車が必要だ。 用意された車に乗り込むと、シートはビニールに覆われ、汚染物質が付いたときにもすぐに張り替えられるようになっていた。走り出すと目に入ってきたのは、一角に置かれている赤いステッカー付きのナンバーがない多くの車。 木野参事官 「あれは事故当時から使われていた車ですが、すでに汚染されているため外に持ち出すことはできません。事故後、敷地内に車の整備場も造られ、しばらく使われていましたが、もう使っていない車も多いですね。」 中には、大型の建設機械も-。黄色の車体に赤いアームが備わったコンクリート圧送車は、当時「キリン」などと呼ばれていたもので、事故当時、使用済み核燃料プールからどんどん水が蒸発していた危機を救った車両の1つ。今も、ひっそりと敷地内に置かれていた。
しばらく東に進むと、太平洋が見えてきた。その手前には、クレーンなどがかかる原子炉建屋が並ぶ。車から降りて、丘の上から見下ろすような形になる。 原子炉建屋との間を遮るものはなく、すぐ目の前、50メートルほど先。原子力発電所の規模感を感じるとともに、「近い…」と緊張感を覚えた。 写真で見て分かるとおり、我々は“軽装”である。線量は十分に安全な基準。しかし、「長時間の滞在は避けるように」との注意書きも掲示されていた。 木野参事官の説明によれば、この場所はもともと旧日本軍の飛行場があったが、戦後に塩田として使われていた。 海抜30メートルの高さがあったが、強固な岩盤に原子炉建屋などを設置するため、海抜10メートルまで掘り下げたという。その場所に立ち、その約20メートル高低差を目のあたりにすると、「非常用電源などが海抜30メートルの場所にあれば…」と思わずにはいられなかった。 実際、高台の上の構造物は、水素爆発の影響で壊れたものはあるが、津波による被害は免れている。