【深層ルポ】記者が原子炉の下で感じたこと 廃炉・“処理水”放出の現場は今…福島第一原発
■原発施設の内部へ 想像を超える厳重な警備
構内への入り口になっている「入退域管理棟」で身分証明書を出すと、警備担当の係員が事前申請していた書類と照らし合わせ、何度も、何度も名前と住所、顔を確認する。しばらく待つとようやく、この先のゲートをくぐるためのカードを手渡された。 この先は、携帯電話やカメラ、カバンなどほぼすべての私物を持ち込むことはできない。そのため、記事中の写真のほとんどは事後、提供されたものを使用している。 ゲートの中に入り、目の前の機器に指を入れ、静脈認証を行う。このとき、ゲートの間に閉じ込められた形で何重ものチェックを受け、ようやく内部に入ることができた。想像以上の警備の厳しさだった。 経済産業省資源エネルギー庁 木野正登参事官 「厳しいでしょう。だけど、これは核を取り扱うどの施設も同じですよ。」 案内をしてくれたのは、経済産業省資源エネルギー庁の木野正登参事官。発災後から12年以上、福島で対応にあたる原子力のエキスパートだ。 警備の厳しさは、原発事故とは関係なく、核燃料が保管されている施設ゆえ、テロ対策が必要だからだという。 木野さんの胸には複数のIDカードが胸にぶら下がっているが、これも警備上あえて施設ごとにIDカードを分けているとのことだった。構内のあちこちに貼られた「核セキュリティの文化醸成」と書かれたポスターも、ここが特殊な場所であることを物語っていた。 先に進み、内部を視察するのに必要な装備を受け取る。全身を覆う防護服、靴下3セット、ゴム手袋2セット、綿手袋、軍手、帽子、マスク、ベスト。以上は、すべて使い捨てのものである。さらに、エリアごとに使い分けるゴム靴と、ヘルメット、放射線を測定する線量計も使う。 ただ、防護服はあくまで放射性物質で汚染された粉じんなどが付着することを防ぎ、それを外部に持ち出さないようにするためのもの。放射線そのものから、身体を守ってくれるものではない。 また、今回は内部被ばくの有無を調べるため、視察の前後で体内の放射性物質からの放射線を計測する「ホールボディカウンター(WBC)」という装置も使用した。1分間、イスに座った状態で、もともと体内に存在する放射性カリウムなどから出る放射線を測定する。筆者の場合は、視察の前後とも1分間で約1400カウント。一般的に500~2000カウント程度だという。 ちなみに、一連の準備を行った「入退域管理棟」の隣には、2015年に完成した「大型休憩所」がそびえ立つ。作業員のための食堂や休憩施設のほか、構内で唯一のコンビニエンスストアがある場所でもある。 到着して、およそ1時間。ようやく内部に入る準備が整った。