なぜ橋本大輝は4人落下の大荒れ種目別鉄棒で37年ぶりの金メダルを獲得することができたのか…知られざる細部の技攻防
東京五輪の体操男子種目別、鉄棒の決勝が3日 有明体操競技場で行われ、個人総合の金メダリスト橋本大輝(19、順天堂大)がただ一人15点台となる15.066をマークして2つ目の金メダルを獲得した。8人中4人が落下するという大荒れの中でノーミスを守った安定感が光った。鉄棒での金メダルは1984年のロサンゼルス五輪の森末慎二氏以来、37年ぶりで、個人種目“2冠”も同五輪の具志堅幸司氏以来37年ぶりで、個人総合で連覇を果たしている内村航平(32、ジョイカル)も達成できなかった快挙。また北園丈琉(18、徳洲会)は難易度を上げて勝負したが2度の落下があり6位に終わった。
「最後は着地勝負になると思っていた」
5人の演技が終わり3人が落下していた。 「スペシャリストが集まる中で、いつも通りを出すのは難しいと思っていた。実際、今日の演技でも落下する選手が多く、多くの選手が攻めてきていた」 試合後に橋本が振り返る通り2度落下した北園に代表されるように、どの選手も演技構成の難易度を上げてきていた。橋本の目の前の6番目に演技したティン・スルビッチ(クロアチア)も冒頭から4連続の離れ技を入れてきた。2017年の世界選手権覇者のスルビッチはノーミスの演技。この時点でトップとなる14、900を叩き出して橋本にプレッシャーをかけた。 しかし、橋本は「いつも通り」を心に誓い平常心を維持していた。 橋本の演技構成は予選、団体、個人総合と同じもの。それでもDスコアはスルビッチと同じ6.500。予選では15.031をマークしており、「いつも通り」ができれば金メダルは獲れる。 G難度「カッシーナ」からE難度「コールマン」、そして「伸身トカチェフ」「リンチ」のD難度の連続離れ技とたたみかけた。一切の乱れのない美しい演技。そしてフィニッシュは新月面である。着地がピタっと決まる。その足は微動だにしない。沈めた膝を静かに伸ばすと両手を広げた。 「最後は絶対に着地勝負になると思っていた。止めたくて、最後気持ちを引き締めて止めにいって、止まってほんとによかった」 そしてルールにのっとり挨拶を終えると、勝利を確信したかのように左右の拳を天に突き上げ、マッスルポーズ。 場内に発表された得点は15.066。最後の演技者、バート・ドゥーロー(30、オランダ)を残しトップに立った。ドゥーローはDスコアを6.8にまで伸ばす演技構成がある。逆転をかけて勝負に出たが、「コールマン」で落下。この時点で決着がついた。