なぜ連覇を狙った体操団体戦で日本代表は0.103差で金メダルを逃したのか…気になる疑問をオリンピアンに聞く
東京五輪の体操の団体戦で連覇を期待された日本男子チームがROC(ロシア五輪委員会)にわずか0.103ポイント差で敗れ、銀メダルに泣く悲劇があった。日本は橋本大輝(19、順大)、萱和磨(24、セントラル)、北園丈琉(18、徳洲会)、谷川航(25、セントラル)の布陣で決勝に挑み、最初の床でトップに立ったが、その後、ROC、中国に抜かれ、最終種目の鉄棒で中国は上回ったが、ROCに0.103ポイント届かなかった。どこに誤算があったのか。そして2024年パリでのリベンジは? 気になる疑問をバルセロナ五輪団体銅メダリストで今大会に体操女子の日本代表として出場している畠田瞳の父親でもある日体大・体操競技部副部長の畠田好章さん(49)に聞いてみた。
素晴らしかったROCの跳馬演技
――「0.103」差で惜しくも逃した金メダルをどう捉えればいいか? 「それほどレベルが高かったということ。日本もROCもバタバタしたミスは一切していない。中国は最初の床でミスは出たが、これほどの三つ巴になることはめったにない。史上稀にみる高いレベルの団体戦が行われたということだと思う」 ――勝敗を分けたのは? 「日本のあん馬のローテーションでROCはつり輪でリードし、日本が不得意としているつり輪のローテーションではROCが跳馬で大きく得点を伸ばした。この日の6種目でROCの跳馬は本当に素晴らしかった。3人が3人着地で動かない。4月にアキレス腱を切った2018年の世界選手権覇者のアルトゥル・ダラロヤンがわずか3か月で出てきたのは信じられなかった。この大会で再発することを承知で賭けに出たのだろう。その執念がチーム全体に力を与えたのではないか。そういう何かがないと、こういうことは起こらない。ROCはDスコアをやりきったし、最後のニキータ・ナゴルニーの床の演技も気持ちがこもっていた。14.666点以上が出てもおかしくない演技だった」 ――「0.103」差をどこかで埋められなかったか? 「あえて“たられば”を探せば、Dスコアを取り切れなかったという部分。北園選手があん馬での降りをE難度からC難度に変え、谷川選手も平行棒のフィニュッシュでひねりを入れずF難度からE難度になった。しかし、北園選手が無理にEでいけばバランスを崩して降りれなかったかもしれないし、谷川選手も降りの前に“つき手”を入れる際に体重が前にかかり、タックルに入るタイミングがワンテンポ遅れていた。一瞬の判断で演技を変えた。もしあのまま無理にひねれば手をついていたと思う。つまりDスコアを取りにいくことで明確なミスにつながり0.1以上の点差になっていた可能性がある。できる限りのことをしたと思う」。 ――意地悪のようだが、橋本の床でラインオーバーもあったし、北園は鉄棒の構成に「トカチェフ」を入れなかった。 「橋本選手の床は、攻めたいい演技。ラインを気にして収めにいくと前に出る。あれは上出来。北園選手は合宿の時点からトカチェフを外していたし、入れたとしても0.2くらいしか変わらない。そこよりも余裕を持って全体のバランスを優先して構成を考えたのだと思う。決して逃げたわけではなく、それは団体戦で自信をもっていい演技するために必要なことだった」