なぜメダル期待の女子バレーが惨敗し不安視された男子バレーが決勝Tへ進むことができたのか…「機能しなかったベンチワーク」
東京五輪の女子バレー1次リーグ最終戦が2日、有明アリーナで行われ日本がドミニカ共和国にセットカウント1-3で完敗。通算成績1勝4敗に終わり1次リーグ敗退が決まった。8強が争う決勝トーナメントに進めなかったのは1996年のアトランタ五輪以来25年ぶり。29年ぶりに決勝T進出を決めた男子代表とは対照的な結果になった。なぜメダルが期待された女子が敗れ、苦戦が予想された男子が先に進んだのか。
「力不足を痛感しています」
バルガスの強烈なクイックはブロックに飛んだ島村の手にかすることもなくコートの真ん中で大きく弾んだ。19-25。実に25年ぶりとなる日本女子の屈辱的な1次リーグ敗退が決まった瞬間だった。直後にコートで泣き崩れる選手は一人もいなかった。勝ったチームが決勝T進出を決めるという大一番を制して狂喜乱舞するドミニカのメンバーとは対照的に日本の選手たちはコートエンドに淡々とした表情で横一列に並んだ。 東京五輪でのメダル獲得の使命を負っていた中田久美監督は、「この5年間、五輪でメダルを獲得するということに頑張ってきて、結果は残せなかったが、選手たちは本当に一生懸命に頑張ったと思う」と第一声を絞りだした。 負けたら終わりの試合での硬さはあったのか?と聞かれると「硬かったかも」と認め、開幕戦のケニア戦で足首を痛めるアクシデントで2試合戦列を離れたエースの古賀については「そこは想定していなかったので、すべてたらればですけど…。よく韓国戦を頑張った」と7月31日の韓国戦から復帰し、この日も、フルにコートに立って奮闘した古賀を称えた。 そして「大変な状況の中、戦うチャンスをいただいて感謝の気持ちだけです」と言葉に詰まり涙ぐんだ。 完敗だった。 第1、2セットを落とし、第3セットは奪い返したが、第4セットは、一時、7点差をつけられて無抵抗のまま終戦した。 主将の荒木も「チームとして焦ってしまってバタバタした試合運びになって終わってしまった。力不足を痛感しています」と不完全燃焼の試合を振り返った。 男子の日本代表監督として北京五輪で指揮を執り、現在、大商大の公共学部教授で男子バレー部総監督の植田辰哉氏は、「どういうバレーをしたいのかというゲームビジョンがまったく見えなかった」と厳しい指摘をした。 「ドミニカの高さとパワーに対抗するには、戦術的な仕掛けが必要だったが、それが感じられなかった。アナリストから逐一データが届いているはずだが、それをベンチがどう受け止め、どう選手に伝えて作戦に落とし込もうとしたのかがわからない。厳しい言い方だが、そういうコミュニケーションを含めたベンチワークが機能しているように思えなかった。結果、試合を通じて、すべてが後手に回り対応、修正力に欠けることになった」