なぜ体操個人総合で橋本大輝は逆転で金メダルを手にすることができたのか…宿敵の中国選手が犯していた知られざるミス
東京五輪の男子個人総合決勝が28日、有明体操競技場で行われ、予選1位だった橋本大輝(19、順大)が金メダルを獲得した。最終種目の鉄棒を前に3位だったが、ノーミスの演技で出場選手中最高得点をマークし計88.465点で逆転勝利した。また北園丈琉(18、徳洲会)は86.698点で5位に食い込んだ。内村航平(32、ジョイカル)の後を継承する新キングが誕生した。
「メダルの色より記憶に残る演技」
最終種目の鉄棒を前にトップの肖若騰(中国)を超えるために14.533点以上が必要だった。予選と銀メダルとなった団体決勝で橋本は15点以上の高得点を叩き出している。 橋本は「自分がミスなくいけば、間違いなく金メダルはあると思った」という。 大きなミスなく演技ができれば逆転できる得点差。だが、この人生最大の金メダルがかかった五輪の緊張の舞台でミスなく演技をやりきることほど難しいものはない。。 だが、橋本のハートは鉄以上だった。 「NHK杯で(五輪)代表を決める緊張よりは、少し少なく、最後、この場面を楽しもうと。待っている間もずっと肩を動かしてワクワクした感じを出した」。 国内の五輪代表を争った5月のNHK杯の緊張の方が上回っていたという。 そして「メダルの色より記憶に残る演技をしようと思った」というから恐ろしい。 橋本は目を瞑り、そして力強く鉄棒を握った。 まずG難度の離れ技「カッシーナ」を危なげなく成功させると、E難度の「コールマン」、「トカチェフ」、「リンチ」とD難度の離れ技を勇壮にたたみかけた。最後はE難度の伸身の新月面でフィニッシュ。着地した橋本は、両脚が揃ってポンと少しだけ前に出たが、勝利を確信したかのように広げた両手でガッツポーズを作り、ひとつ手を叩き、最高の笑顔を浮かべた。そして審判に挨拶すると「ウッシャー!」と雄叫びをあげた。 まだ得点は出ていなかったが、3位のナゴルニー(ROC)は祝福のハグ。肖若騰は、敗戦を認めてあきらめた顔をしていた。電光掲示には14.933。橋本は「やったー!」と歓喜の叫び声を出した。5種目の平行棒を終えた時点で、トップの肖若騰とは「0.467」点差の3位だった橋本の逆転優勝だった。 橋本に涙はなかった。 「もう言葉では言い表せないくらい…本当に人生でうれしい瞬間って一番(言葉で)表せない。団体のみんなで(表彰台の真ん中に)上りたかったなという強い気持ちがある。今日はそのメンバーが応援してくれたので金が取れた。感謝の演技ができたと思う。ここで涙を流してしまうと今の状態に満足している状態。チャンピオンは涙を流さず前だけを見ていると思っていきたい。笑って楽しめたのがよかったと思う」 インタビュアーに団体戦の銀メダルとの重みの違いを聞かれ「重さはそんなに変わらないけれど、積み上げたものの重さを感じた」と答えた。 なぜ橋本は逆転で金メダルを獲得することができたのか。