東京五輪代表にOA枠選出のキーマン遠藤航の“欧州市場価値”が約2億円から約13億円に跳ね上がった理由とは?
もっとも、ドイツを席巻したデュエルモンスターぶりだけが、遠藤の評価を急上昇させたわけではない。ドイツサッカー協会の公認S級ライセンスを取得し、ブンデスリーガ1部のアルミニア・ビーレフェルトでヘッドコーチを務めた経験をもつ解説者の鈴木良平氏は、時間の経過ともに遠藤が何度も放つようになった「縦パス」をあげる。 「鋭い縦パスが入ると、相手の守備のラインをひとつ、ふたつと通り越していく意味でチャンスが生まれる。遠藤はボランチの位置からそれができる。背後のキーパーや最終ラインの選手からボールを受けて、前を向いた瞬間に縦パスを出せるから評価される」 縦パスの効果はすでにA代表にも還元されている。昨年11月のパナマ代表戦。森保ジャパンを勝利に導いた南野のPKは久保のスルーパスから、さらに場面を巻き戻せばセンターサークル内から放たれた遠藤の縦パスが起点になって生まれていた。 「遠藤選手から自分が受けたかった位置に素晴らしいボールが来て、前を向いたときには南野選手のいい動き出しが見えたので、あとは自分がパスを流し込むだけでした」 決定的なパスをこう振り返った久保は、両チームともに無得点で迎えた後半から投入され、デュエルの強さと縦パスとで試合の流れを一変させた遠藤について、こう言及している。 「すごく余裕があると感じましたし、それぞれのクラブでみんな結果を出して日本代表に来ているなかで、遠藤選手は特に自信をもっていると思いました」 そこから8ヵ月もの時間を経て、初体験だったブンデスリーガ1部の戦いを介して遠藤がさらに膨らませた自信と、ヨーロッパサッカー界のトレンドの一端を担う、ボールを受けて即座に放たれる鋭い縦パスが東京五輪に臨むU-24代表に加わる。 「すべての試合に出るイメージで準備をしてきました。中2日の連戦のなかでも、いままで自分がブンデスリーガやA代表で見せてきたパフォーマンスを、いかに落とさずに出し続けられるか。この点は自分にとっても新しいチャレンジだと思っています」 母国開催のヒノキ舞台への抱負を、遠藤は淡々とした口調でこう語った。1対1の強さは、プロになった湘南ベルマーレ時代から評価されてきた。ならば、ドイツで搭載した縦パスの秘訣は何か。答えは絶えずフル稼働させている頭脳にある。 「もちろん味方のポジションも見ますけど、僕はどちらかと言うと相手がどのようにプレッシャーをかけてくるのか、というところを特に意識しています。相手のシステムや立ち位置を常に見ながら、どこでボールを受ければ縦へさらにつけやすくなるのかを考えて、しっかりと自分のポジションも変えていく。最近の変化をあげればそこですね」 昨秋のパナマ戦後にこう語っていた遠藤は、今年に入ってからの後半戦で3ゴールをマーク。自らを進化させていく先にある理想的な姿をこう表現していた。 「僕は守備的というイメージがあるかもしれないけど、いまのサッカーは守備と攻撃を分けて考えない。攻撃の部分でもどんどん関わっていける選手になりたい」