マイコプラズマ肺炎、過去最多レベル 前年比40倍超で今後も増加の可能性
呼吸器感染症の「マイコプラズマ肺炎」の患者が過去最多レベルに増加している。厚生労働省は自治体向けに注意喚起の事務連絡を出すなどして、手洗いやマスク着用などの感染対策を呼びかけている。新型コロナウイルス対策で患者が減り、免疫を持たない人が増えたことが原因とみられるという。
国立感染症研究所(感染研)によると、9月30~10月6日までの1週間(2024年40週)に全国約500の定点医療機関から報告された患者数は1医療機関当たり1.94人。その前の1週間(同39週)は1.64人で前年同期比41倍だった。
6月ごろから患者数は増加傾向にあり、39週で現在の集計方法になった1999年以降の最多を記録したが、2週連続で過去最多を更新したことになる。新型コロナ流行後の2020~23年は同0.01~0.05人と激減していた。
都道府県別では1医療機関当たり福井県が39週5.33人、40週4.83人で最も多かった。東京都は39週が2.96人、40週は2.88人と全国平均を上回っている。
マイコプラズマ肺炎は新型コロナウイルス感染症のようなウイルスが発症原因ではなく、「肺炎マイコプラズマ」と名付けられた細菌に感染して発症する。以前はほぼ4年に1回の周期で流行し「オリンピック肺炎」とも呼ばれる。
厚労省や感染研によると、飛沫(ひまつ)感染や接触感染で広がる。感染すると2~3週間の潜伏期を経て、発熱やだるさ、頭痛などの症状が出る。解熱後もせきが長く続くことがある。感染しても多くは軽い症状で済むが、一部がマイコプラズマ肺炎となり入院が必要になる。大人も感染するが子どもの患者が多い。
また患者の5~9%程度は中耳炎や胸膜炎、心筋炎、髄膜炎などの合併症を発症すると報告されている。治療はマクロライド系の抗菌薬投与が基本だが、耐性を持つ株も検出されている。まだ有効なワクチンはない。流行時には市中肺炎全体の20~30%を占めることもある。