謎だらけの「古代ローマの発明王・ヘロン」の定理が美しいほどに簡潔…「ピタゴラスをも凌駕する」その価値は「一般性」にあった
ピラミッドやストーンヘンジに兵馬俑、三内丸山遺跡や五重塔に隠された、現代人もびっくりの「驚異のウルトラテクノロジー」はなぜ、どのように可能だったのか? 【画像】発明した蒸気機関を説明するヘロンを描いた絵 gettyimages 現代のハイテクを知り尽くす実験物理学者・志村史夫さんによる、ブルーバックスを代表するロング&ベストセラー「現代科学で読み解く技術史ミステリー」シリーズの最新刊、『古代日本の超技術〈新装改訂版〉』と『古代世界の超技術〈改訂新版〉』がベストセラーになっています。 それを記念して、残念ながら本編には収録できなかったエピソードを短期集中連載でお届けします。第5回からの主人公は、生没年などが未詳なことから“神秘の発明王”の異名をとるヘロン。 なんと2000 年も前に「エンジン」や「自動ドア」を発明していたという彼の数学上の大功績「ヘロンの公式」を紹介しましょう!
“神秘の発明王”ヘロン
紀元前6世紀のピタゴラスにはじまり、デモクリトス、ヒッポクラテス、アリストテレス、アルキメデス、ストラトン、クテシビオス、ウィトゥルウィウスに引き継がれた紀元前の古代ギリシャ時代に確立されて、二千数百年を経た現在においても、数学、科学、技術、医学の分野で“現役”として活躍しているものは少なくない。 古代ギリシャの偉大な師、先輩たちの業績を集約し、純粋数学、物理学分野の業績のみならず、さまざまな分野のさまざまな装置を発明したのがヘロンである。彼の時代にもし、現代の特許制度のようなものが存在したならば、ヘロンは幾百の特許権を所有し、“発明王”とよばれたことであろう。
ヘロンの公式
ヘロンの生没年には諸説あり、よくわかっていない。 一般に「クテシビオスの弟子」といわれているので、クテシビオスが生存した紀元前3世紀から紀元前2世紀以降の人物と考えられている。ただし、“弟子”といっても直弟子なのか孫弟子なのかがはっきりしないので、ここでは“紀元元年前後の人物”としておきたい。 まず、ヘロンの数学分野における業績として、三角形の面積を求める「ヘロンの公式」を紹介しよう。
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