イーロン・マスクが米宇宙政策に影響力、NASA改革とSpaceX優遇で安全保障にも波及へ
■宇宙での同盟関係 アメリカおよび協力各国による宇宙政策は、今後さらに中国との競争激化に直面することが予想されている。また、ロシアなどによる予測できない行動への備えが必要になるだろう。 ただ、中国の動きがアメリカの動きを促進する可能性もある。宇宙における優位性維持や安全保障上の理由から、2020年から2023年まで米宇宙軍の副司令官を務めたジョン・ショー氏は、中国の進歩を考えると、アメリカの新しい政権は月探査ミッションを加速させるよう圧力を受ける可能性があると示唆し、中国との競争の激化が新政権の宇宙政策を形作る要因となる可能性が高いと指摘した。
中国は2030年代初頭の有人月探査ミッションを計画しており、それは宇宙における優位性においてアメリカを凌ぐまでになろうという中国の野心を強調している。 安全保障の面に目を向けると、トランプ氏は2019年に米宇宙軍を設立しており、宇宙でも中国にその存在感を示していくと考えられる。だが、もし国際的な同盟関係に対するトランプ大統領の懐疑的な姿勢が、宇宙分野にまで適用されるようなことがあれば、安全保障上の問題に直面することも考えられなくはない。
アメリカは長年、宇宙での同盟ネットワークを構築してきた。アメリカは、アメリカ宇宙コマンド(USSPACECOM)を通じて、世界の営利企業、学術機関、同盟国政府など185を超える組織と宇宙状況把握(SSA)システム協定を結び、衛星、デブリ、その他の宇宙物体の位置を監視している。今年4月にはウルグアイ空軍もこの仲間に加わったばかりだ。もし、新政権がこの同盟関係を解体したり、提携関係を制限したりすれば、宇宙安全保障への全体的な取り組みが弱まり、衛星追跡、宇宙交通管理、防衛態勢における連携が難しくなるかもしれない。
ショー氏はアメリカに挑戦しようとする潜在的敵対国の取り組みは、国家安全保障宇宙政策の重要な原動力であり続けるとしており、中国やロシアの宇宙兵器開発にも言及して、今後も「脅威が減少するとは思わない」と述べている。
タニグチ ムネノリ :ウェブライター