明るい希望をもたらす2024年の医学のブレイクスルー7選、アルツハイマー病の血液検査など
5. コロナ・インフル混合ワクチン
人々に毎年1回ワクチン接種を受けさせるのも難しいのに、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザのワクチン接種を両方となると至難の業だ。 けれども幸い、新型コロナとインフルエンザの両方を予防できる混合ワクチンが、早ければ2025年にも利用可能になりそうだ。モデルナ社が臨床試験を行った混合mRNAワクチンは、個別のワクチンよりも優れた免疫反応を誘導し、臨床試験中の安全性と副作用の強さも同程度だった。 しかし、ビオンテック社とファイザー社が開発した混合mRNAワクチンは、インフルエンザB型に対する免疫反応が十分得られていない。また、ノババックス社の混合ワクチン(mRNAではなく組み換えタンパクワクチン)は、安全性への懸念から臨床試験が保留されたが、後にその懸念はワクチンとは無関係だと判明した。
6. 女性が自己免疫疾患になりやすい理由の理解が深まる
全身性エリテマトーデスや関節リウマチなどの自己免疫疾患は、免疫系が自分自身の細胞を攻撃してしまう病気で、圧倒的に女性に多い。実際、自己免疫疾患の患者の78%以上が女性だが、理由は不明だ。 科学者たちは、女性が持つ2つのX染色体のうちの1つを不活性化するしくみの不具合が自己免疫疾患に関連している可能性があることを発見した。 男性はY染色体とX染色体を1つずつ、女性はX染色体を2つ持っている。X染色体は1つだけ機能していればよいので、通常、女性が持つ2つのX染色体のうち1つは全身の細胞で不活性化されている。新しい研究では、X染色体を不活性化するタンパク質が自己免疫疾患の引き金となっている可能性が示唆された。
7. ピーナッツなどに対するアレルギー反応を減らす薬
子どものいる人々に朗報だ。FDAが、ピーナッツなどの食品に対するアレルギー反応を減らす薬として、ゾレア(一般名オマリズマブ)を1歳以上の患者に使うことを承認した。 米国では10人に1人以上が食物アレルギーを持っていて、子ども、特に幼児や乳児ではもっと多い。こうした人々がアレルギーを引き起こす食物(アレルゲン)を摂取すると、数分から数時間以内に反応が現れ、軽いものから命にかかわるものまで、さまざまな症状が出る。 ゾレアは日本では既存の治療で効果が不十分な気管支喘息、季節性アレルギー性鼻炎、特発性の慢性蕁麻疹に使われている。 2月に発表された新しい研究により、オマリズマブは、治療開始から約4カ月後にはピーナッツやその他の食物に対するアレルギーのリスクも大幅に減ることが明らかになった。しかし、この薬は2週間または4週間ごとに注射する必要があり、食物アレルギーを完治させるものではないため、患者は引き続きアレルゲンを含む食物を避ける必要がある。
文=Sanjay Mishra/訳=三枝小夜子