明るい希望をもたらす2024年の医学のブレイクスルー7選、アルツハイマー病の血液検査など
3. ブタからヒトへの臓器移植
医師たちは2024年、ブタからヒトへの臓器の移植を複数例、成功させた。これは、移植待機リストに名前を連ねる人々にとって新たな可能性を開く画期的な出来事だ。 移植された臓器のうちいくつかが腎臓であることは重要だ。腎臓は移植が必要とされる臓器の筆頭で、末期の腎臓病患者が増えているのに伴い、移植を必要とする患者も増加の一途をたどっているからだ。 3月には米ボストンのマサチューセッツ総合病院の医師たちが、62歳の男性に対して、遺伝子改変ブタの腎臓を移植した。ドナーのブタは、有害なブタの遺伝子が除去され、ヒトの遺伝子を追加して移植の適合性を高めている。さらに、ブタ内在性レトロウイルスも不活性化して、ヒトへの感染リスクをなくした。 4月には米ニューヨーク大学の医師たちが、54歳の女性に対して、拒絶反応を抑えるために遺伝子編集したブタの腎臓と胸腺の二重移植を実施した。 より実験的な手術としては、中国の医師が臨床的に死亡した患者にブタの肝臓を移植した。移植された肝臓は、10日間の研究期間中、胆汁をつくり続けた。 しかし、動物からヒトへの臓器移植が一般的になるには、まだまだ学ぶべきことがたくさんある。いずれの患者も、ブタの臓器を移植された後、長くは生きられなかったが、死因は移植とは関連のないものだった。 これまで研究から、動物由来の臓器への拒絶反応は、人間のドナーから提供された臓器への拒絶反応とは全く異なるプロセスで起こることが分かっていて、科学者たちはまだすべてのハードルを克服するには至っていない。
4. アルツハイマー病を判定する血液検査
スウェーデンの科学者たちは、高齢者のアルツハイマー病を約90%の精度で判定できる血液検査を開発した。 現在、アルツハイマー病の正確な診断には、脳脊髄液の検査かPETスキャンによる脳画像診断が必要だ。しかし、これらは、認知機能の低下を訴える患者を最初に診ることが多いプライマリケア医のクリニックで行える検査ではない。 新しい検査「PrecivityAD2」では、アルツハイマー病の複数の主要なバイオマーカー(生物学的指標)の血中比率を測る。 専門家は、8月に公開したナショナル ジオグラフィックの記事での取材に対し、PrecivityAD2の導入によって人々がアルツハイマー病の検査を受けやすくなり、速やかに診断を受けられるようになれば、より早く治療を始められるようになるだろうと語った。しかし、この検査はまだFDAの承認を受けておらず、現時点では公的および民間の保険の対象にはなっていない。