伝統に挑みながら和傘文化を守り続ける「仐日和」
一本一本に技術と想いを詰め込んで
ー和傘は一本作るのに2ヶ月ほどかかるそうですが、完成までの流れを教えてください。 まず、部品屋さんから傘の開閉を司る「繰り込み」というパーツと傘骨を仕入れます。そのあと傘が閉じたときにきれいな形になるよう傘骨にカーブをつける「ためかけ」を行って、糸で繰り込みと傘骨を繋ぎます。 そうすると、開閉できるスケルトンの和傘みたいな骨組の状態になるんです。そこに、何工程かにわけて和紙を張っていきます。雨傘も日傘も、和紙1枚で仕上げる場合は同じものを使いますが、日傘は「二重張」といって、雨傘に使うものよりも薄い和紙を2枚重ねて仕上げるものもあります。 次に、和傘を美しく閉じるために和紙に折り目をつける「たたみ込み」をして、雨傘の場合は雨をはじくために油を染み込ませて天日干しをします。日傘は和紙のままで使用するので、油を染み込ませる作業は行いません。 そのあと、外側の骨の上だけに塗装して、最後に内側の傘骨に補強と飾りを兼ねた「糸かがり」という作業を行い、部品をつけて完成です。 ーお話を聞くだけでも膨大な工程を経ているのがわかります。その中でも特に大変な作業はありますか? 和傘は和紙を張るまでの骨組の準備で良し悪しが8割くらい決まってくるので、土台作りが本当に大切です。 私が一番気を引き締めて臨むのは塗装の作業です。最終段階の作業なので、失敗すると全部無駄になったり訳あり品になったりしてしまいます。失敗するとどうにもできないので、特に集中力が必要ですね。
ー和傘を作るうえでの、河合さんのこだわりを教えてください。 和傘はよく「開いて花、閉じて竹」と言われます。岐阜和傘は閉じたときが細身で美しいと言われているので、閉じた姿にこだわっています。開いたときの華やかな姿のほうに注目されることが多いですが、傘は閉じている時間のほうが長いので、その佇まいがきれいだと「よくできたな」と思います。 また、日々たくさんの和傘を作っていると、何十本の中の一本というふうに考えてしまいそうになるのですが、お客さんにとっては一本中の一本なんですよね。どんなに作業が立て込んでも、それを思い出してしっかり一本ずつ作っていきたいです。