伝統に挑みながら和傘文化を守り続ける「仐日和」
ーどのようなお客さまが和傘を購入されるのですか? 日常使いに買われていく方が圧倒的に多く、贈り物や撮影用に購入される方もいます。外国の方が買われるのかとよく聞かれますが、お客様のほとんどが国内の方です。 以前お客さまから、「和傘を使いたいから、雨の日が楽しみになりました」と言ってもらえたことがあってすごくうれしかったです。
ー河合さんが思う和傘の魅力を教えてください。 雨傘は、雨粒が和紙を叩く音が独特で、洋傘とは違うので面白いなと思います。ピンと張ったテントに雨粒が当たるようなイメージの音です。 それから雨傘は、外側から見ると暗めの色に見えるんですよ。新聞紙などもそうですが、油を染み込ませると色が濃くなるんです。でも内側から見ると光を通してとても明るく見えます。日傘も陽にかざすと繊維や色合いが鮮やかに浮かび上がってすごくきれいです。これは和傘を使った人だけの特権ですね。 和傘は、重くて手入れも大変というイメージがある方も多いのですが、重さに関しては持ってみると「そんなに重くない」という感想がほとんどです。また、一回使ってみると手入れも難しくないので、ぜひ一度実物に触れてみてもらいたいなと思います。 ー繊細な技が込められていながら実用的という点も和傘の魅力ですね。より長く使うためにはどのようなお手入れが必要でしょうか? 日傘は特に必要な手入れはありません。雨傘は、使ったら乾かすという点だけ気をつけてもらいたいと思います。丁寧に使ってくださる方だと、10年くらい修理なしということもあります。 実はずっとしまいっぱなしで使わないのが、一番早くだめになってしまいます。油と油がくっついてしまうので、定期的に使ってもらったほうが長持ちしやすいです。
重要なのは、安心して職人を続けられる環境作り
ー和傘の職人として、河合さんが思う課題はありますか。 昔は和傘作りの一大産地として、作れば作るほど売れるというような状況で、商売として成り立っていたんですよね。職人さんもたくさんいて、多少安価でも量を作ってカバーできていました。 でも職人さんが減って、量産はできないのに単価は安いままで、商売として成立させるのが難しくなっていきました。 和傘の道に進むために働いていた税理士事務所を辞めるとき、所長から「職人である前に個人事業主であることを忘れるな」と言われたことを覚えています。 商売として成立させるためには、やはりしっかり稼いで職人としての対価を得るというサイクルを作ることが必要です。生活を削らないと和傘を作れない状態では、いい和傘はできません。生活していくために和傘を作るという本来の形にしていきたいです。 ー若い世代への技術継承なども重要になってくるかと思いますが、河合さんのお考えを教えてください。 もう一度和傘が地場産業として岐阜市に根付いてほしいと思っているので、一子相伝というよりは、仕事として若い世代に参加してもらえる環境を作らないといけないなと思っています。 やはり他の仕事と変わらないお給料をもらえないと職業としての選択肢に上がらないですし、和傘を作ってみたい人に「安い給料で我慢してね」という、いわゆるやりがい搾取みたいなことでは続いていかないので、ちゃんと仕事として成立する状況にしないといけないですね。 そのうえで和傘作りの技術を伝えていくための場所や道具、材料の確保などを行い、次の世代に繋がる環境を整えていきたいです。