「壁ドン」ほんとにきゅんとする?ーー多様な性とジェンダーの表現を模索する、ドラマのつくり手たち #性のギモン
今年1月から3月にNHKで放送されたよるドラ『恋せぬふたり』は、恋愛しない男女の生き方を描いて話題になった。ドラマを通じて「恋愛しないというセクシュアリティー」を知った視聴者も多かった。性やジェンダーに関する価値観は、ドラマや映画などのエンタメ作品から影響を受けることがある。つくり手たちはどんな思いで取り組んでいるのか。『恋せぬふたり』の演出家、性的で親密なシーンの撮影を調整するインティマシー・コーディネーター、高校生の性教育を描いたドラマ『17.3 about a sex』の脚本家、3者に聞いた。(取材・文:城リユア/撮影:西田香織/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
テレビドラマに恋愛は必須? 押田友太さん
『恋せぬふたり』を企画した押田友太さんは、アロマンティックとアセクシュアルという性的マイノリティーを取り上げるにあたり、1年以上かけて準備をした。アロマンティックは他者に恋愛感情を抱かない恋愛的指向を、アセクシュアルは他者に性的に惹かれない性的指向を指す。 「数年前に地方局で青春ドラマをつくったときに、高校生が部活動に打ち込む話にもかかわらず、『恋愛要素がないとドラマが深まらないし、面白くならないのではないか』ということで、恋愛を絡めたんです。僕も納得して演出したんですが、なんとなくモヤモヤするものが残りました」 「別の作品の取材で性的マイノリティーに詳しい人と出会い、アロマンティックやアセクシュアルについて詳しく教えてもらう機会がありました。『恋愛=幸せ』と描かれると、自分たちが否定されているように感じる当事者もいると知ったんです。朝ドラもヒロインが決まると『相手役は誰?』と話題になりますよね。すべてのドラマがそうというわけではありませんが、恋愛要素を入れることが当たり前になっているのは確かです。誰かを勇気付けたいと思ってエンタメをつくっているのに、傷付けることがあるかもしれないと、ハッとしました」