「壁ドン」ほんとにきゅんとする?ーー多様な性とジェンダーの表現を模索する、ドラマのつくり手たち #性のギモン
『恋せぬふたり』では、アロマンティックおよびアセクシュアルの調査研究や啓発活動をしているNPOや、セクシュアリティーをオープンにしている当事者らに考証として参加してもらった。 主人公は「兒玉咲子」と「高橋羽(さとる)」の二人。咲子は「恋愛がわからない」人物で、羽は「恋愛に嫌悪感がある」人物だ。考証チームに協力してもらって「この場面で咲子や羽は何を思うか」などを細かく設定し、脚本に反映していった。俳優陣にも回答を共有した。 「例えば、家族の前で咲子と羽が恋人のふりをするシーンで、最初の段階では手をつなぐことになっていましたが、考証チームに台本を見てもらうと、羽のキャラクター(触れたり、触れられたりすることが苦手)としては、どんな状況でも手をつなぐのはしんどい。なので、かなり細かくその台本を調整して、最終的につなごうとするけどやっぱり無理ですと言って引っ込めるシーンになりました」
決めつけはしたくなかった 押田さん
「取材を通して、当事者の方にもいろんな人がいることを知ったので、アロマンティックやアセクシュアルはこうだという決めつけや、デフォルメして面白がるようなことは絶対にしたくなかった。『心の声』に当たるナレーションやモノローグは、極力入れないようにしたんです。それよりも、演じている人の表情や、映像・音の加工などでゆらぎを描写するようにしました。(咲子を演じた)岸井ゆきのさんや(羽を演じた)高橋一生さんとも、『見る人がさまざまに捉えられればいいね』と話し合いながら進めていきました」 性的に接触するシーンがある放送回では、冒頭に「性的なシーンがあります」というテロップを入れて注意喚起をした。 『恋せぬふたり』には、当事者以外の視聴者からも好意的な反応が多数寄せられた。その鍵となったのが、咲子の元カレの「松岡一(カズ)」だ。カズは元カノである咲子とよりを戻したがっており、咲子の「恋愛がわからない」という気持ちがわからない。しかし、話が進むにつれてよい関係を見つけていく。