「小さいうちからこういう子が地域にいることを知ってほしい」――障がいのある子も安心して遊べる「インクルーシブ公園」の意義と、保護者の思い #こどもをまもる
小さいうちから交わることを大切に
インクルーシブな遊具、公園がこれから増えていく流れは間違いない。だからこそ、取材の過程で浮かんだ根本的な論点を共有したい。 なぜ障がい児は健常児と一緒に遊ばなければならないのか。インクルーシブではなく、障がい児用の公園をつくればいいのではないか。この取材に当たり、障がい児を持つ保護者の方のブログを拝見したところ、少なくない方がこの点について言及していた。他の保護者から冷たい目で見られる、自分の子どもが他の子を傷つけないか、傷つけられないか不安だ……。 「私も当初は障がい児専用の公園がほしいと思っていました」 冒頭で紹介した美穂さんはそう語る。 「子どもを公園に連れて行くと他人の目が気になり、なにかやらかしたらどうしようとか……。でもそれは今から思うと、私自身が我が子の障がいについて受け入れがまだできていなかったからだと思う。今は一緒に遊んだほうがいいと思います」
その理由について、美穂さんは「だって今はなんでも分離と分断じゃないですか」と言う。 「障がい児用の行政サービスはとてもありがたいのですが、健常児とかかわることがほとんどない。他の保護者に我が子のことを知ってもらう機会が全くない、ということに不安を感じています。障がいやその特性を知らないと、知らないものに対する恐怖心が生まれるのではないでしょうか。小さいうちからこういう子が地域にいるんだよということを周りに知ってほしい」 これは障がい児を持つひとりの保護者の意見であり、また別の保護者の意見もあるだろう。健常児の保護者の意見もある。難しい論点だが、ただひとつ言えるのは、お互いが尊重し合っていく方法についてみんなが考える体験もまた、インクルーシブなものだということだ。 --- 神田憲行(かんだ・のりゆき) 1963年、大阪市生まれ。関西大学法学部卒業。師匠はジャーナリストの故・黒田清氏。昭和からフリーライターの仕事を始めて現在に至る。主な著書に『ハノイの純情、サイゴンの夢』、『横浜vs.PL学園』(共著)、『「謎」の進学校 麻布の教え』、将棋の森信雄一門をテーマにした『一門』など。 ---- 「子どもをめぐる課題(#こどもをまもる)」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。子どもの安全や、子どもを育てる環境の諸問題のために、私たちができることは何か。対策や解説などの情報を発信しています。